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リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第一章 プロローグ
9/70

1-9 帰宅して見たもの

 午後一時過ぎ。地下室にいると、自分も変な世界へまた行ってしまうような気もしたので、俺は厨房へ戻った。


 そうして、あっという間に時間は過ぎ、午後六時になった。


 この店の営業時間は夜九時までだ。でも俺は、今日だけ九時ではなく、七時にしてもらったのだ。これも新人にゆとりを与えるためなのだという。ゆとりばっか与えると大変なことになるのにねぇ……。


 そうして時刻は午後七時を回った。


「それではお先に……」

「はい」


 俺は洋食店を後にした。何事も無く終われるはずだと考えていた。




 午後七時半に、俺は自宅に帰ってきた。実質、両親と会うのは大学卒業後二回目だ。一回目は先ほど帰ってきた時、二回目は今からだ。


 ふとため息を付いて扉を開ける。……が、鍵が掛かっていた。


「またかよ」


 俺はふと言葉を漏らしてしまった。でも、一日に二度もされれば当然だ。が、今のはインターホンを鳴らさなかったのも原因としてあるかもしれないな。


 俺はインターホンを鳴らした後、顔を見せるため、インターホンのカメラの直ぐ目の前に立つことにした。


「……」


 静かな空気を感じる。反応が無いので、俺は仕方なく勝手口から入ることにした。


 勝手口は昼間同様、ほとんど夜の時間帯を除いて開いている。だから俺はそれを狙って勝手口から入った。台所を通っているさなか、左の方にリビングがあるのだが、その方向には、既に倒れて死んでいる両親の姿があった。


「……え?」


 わけが分からなかった。なんで? なんで電気がついているのに、死んでいるの? これは幻想? 夢? 未来? ……なんなんだ。


 その時だ。


 俺は背後に急に人影を感じた。それを感じて俺はすぐさま回避するために、前へと避け、後ろを向いた。そこには、ある少年が立っていた。


「君は……?」


 俺はその少年に聞いた。茶髪で、眼鏡をかけていて、左手に包丁を持ち、なおかつ後ろで髪を結んでいた。年齢は小学生の男の子くらいだろうか。とても大人の男には見えない。


 ……いや、本題はそこじゃない。なんでこの少年がここにいるのか。そして、何故その少年は血のついたナイフを持っているのか。それが疑問だった。


「俺の両親を殺したのは、お前か?」

「……」


 その少年は答えなかった。笑いもしなかった。


 勝手口付近に俺がいて、更に俺はついさっき勝手口付近から家に入ったので、この少年はきっと、勝手口の位置がわかるんだろう。


 でも、俺はこの少年と面識はない。学校でも、街中でもあったことのない少年だ。


「君の名前は? 年齢は?」

「須戸……です」


 少年はようやく名乗った。須戸という苗字らしい。


「君は、なんで俺の両親を殺したんだ?」

「……」

「答えろ」


 須戸という名のその少年は、そのまま下を向き、ぎゅっと口を堅く閉じた。つまり、答えたくないんだろう。俺が怖いのかな?


「俺が、怖いか?」


 こくん、と須戸は頭を上下に振って俺の服を掴んだ。そして須戸はぎゅっと俺を抱き寄せた。


「お、おい須戸……やめ……」


 なんか変な感じだな。男に抱かれるなんて。年下に抱かれるなんて。……あ、俺はそういう風な、男同士の恋愛は可笑しいと思っていると思っているから大丈夫だ。変な心配はしなくてよろしい。


 あの……脇腹に包丁が当たりそうなんですが―――。


「あの、その……。包丁は危険なんで、ちょっと……」

「……ごめんなさい」


 須戸は頭を下げた。普通に六〇度を超すほどに下げているのでこんな奴が殺人を犯したと考えたくもないが、包丁を持って不法侵入しているんだからそう考えても無理は無い。


「そうか。ほら、自首してきな」

「い、嫌だ!」

「自首して来い」

「嫌だと言ってるじゃないか!」

「駄目だ」


 俺がそう言い切って、主張して、貫き通した。けれどそれは、須戸からの苛立ちを買うことになってしまった。


「ならお前も……殺す」

「やれるもんならやってみろ」

「てめぇ!」


 須戸は右手に包丁を構えて、俺の腹を目掛けて刺そうとした。だが、それを俺の右手が止めた。俺の右手は、どこぞの作品の主人公のように、電撃を止めたりはできないし、レベルゼロでもない。というか、この世界に能力でレベルゼロだとかいうレベル評価は存在しない。


 俺は右手を少年の左の脇腹に回し、すぐさま少年の体を持ち上げた。そして、その少年が右手に持っていた包丁を俺が取り上げた。この時、最後の抵抗で、若干手首に包丁で斬られたが、大丈夫だ。特に問題はない。


「は、離せ!」

「駄目だ! お前は離さないからな! 警察署に行くまで!」

「……ざけんな!」

「ほら行くぞ」

「だから離せと言っているんだ!」


 俺は半強制的に、須戸を連れ出した。というのも、やはり悪質なことをしたのなら、方の裁きを受けるべきだと思ったからだ。それこそ一般人の考えだ。例え可愛いからといって、何でもかんでも許す訳にはいかない。


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