7-10 4月1日
俺は今までリア充というものが嫌いだった。
何故嫌いなのかといえば、今ここに存在するリア充どもが街中でイチャつき、そうしてこちらに喧嘩を売っているように思えるからだ。だからこそ、俺はリア充が嫌いだったのだ。世界から抹消してしまいたいくらい。
でもあの時の、友達がいなかった時の考え方じゃなくなった。俺は変わった。そうだと思う。でも、なんでこんな二三の歳で変わったのだろうか。でも何かあったんだと思う。こんなに心身ともに成長している時点で、それは否定出来ないだろう。
「待てぇっ!」
「嫌。助けて六宮英人!」
暗い一日を、悲しい一日を壊すために俺は歩み出す。タイムマシンを必要としない世界を築くんだ。未来も過去も、自由自在に簡単にいけるようになればいい。事故も起こらないそんな機械を作るんだ。だけど、色んな方面には手を出し過ぎないようにしていきたいと俺は強く強く思う。そして俺は今日も笑顔を見せて「おまえら」と言う。隠れている「W」の文字が浮かんでみえる。
エイプリルフール。それは年に一度の嘘つき祭り。年に一回の祭りを楽しまない奴の何処がいいのかわからないが、俺は楽しむことにする。
すべての楽しみを楽しんで味わうことこそが、俺の楽しみなのだとすれば、俺は全力でそれを楽しみたいと思った。絆を深め、笑顔がもっと増えるような世界になってほしいと思っている俺が、そこにはいた。
そして俺は目のゴミを取り除くように左右に指を移動させながら言った。
「んじゃあ、おやすみ……。今日も楽しくない一日を過ごしますかね、と……」
「だね」
美玲が俺の後に続いて笑顔で、俺の方を向いてそう言って続けた。
「だな」
須戸が美玲の後にこちらもまた俺の方を向いてそう言って続けた。
「今日も一日、笑いの絶えない家族でいますように」だとか「仕事頑張れますように」
小さく口ずさんで俺は言った。妹達はそれを聞いたからか笑顔に包まれていく。そして、「また今日も、面白い一日が幕を開ける」と、俺はそんなことを思っていた。




