7-6 3つの選択肢
「バッド(エンド)もデッド(エンド)も大体似てるんじゃねえのか……」
「そんなことどうでもいいけど、何を選ぶんだ、六宮英人!」
「ここは……。④一人で食べる」
「うわぁ。定番のオチ。④の選択肢を作る。……甘かったな、六宮英人。④の選択権などは君にない! あくまで三つの中から選びたまえ!」
俺は悩み始めた。ここで悩んじゃいけないはずだったのに。「選んじゃダメだ選んじゃダメだ」みたいに、某人造人間を操作する一四歳の少年パイロットの名言をパロディに使おうと思ったのに! なんでだ! なんでこうなるんだ!
「ここはやっぱり……」
①は定番すぎる。確かに俺からしてみれば、口移しの②は経験してみたい。が、流石に見ず知らずの人と口付けってのも何か……。だからここは③の後に①をしてもらう、の③かな。
まあ、ルート分岐なんか別に関係ないだろう、なんて俺は思い始めていたので、それといって深く考えるわけでもなかった。人によっては「深く考えただろお前」といわれるかもしれないが、あくまで俺は自分の考えを貫き通す!
「さあ、選択肢は三つ。六宮英人。君はは何を選ぶ!」
「う、うぐぐ……。俺は③の後に①をしてもらう、というのを希望します……」
「じゃ、ふーふー。あー……」
スプーンの上に乗っかっているオムライスの一部。ジュルリと俺は何かが零れ落ちそうでそれを押さえつけながら、俺はスプーンの方向へ口を向けていく。
「んー。もぐもぐ……」
俺は女性店主に「美味しいか?」だとか聞かれ、もぐもぐと口の中に食べ物を入れながら「は、はい」だとか答えた。本当は行儀が悪いわけだが、今はそこはどうでもいいんじゃないかなんて思う俺と直すべきだという俺の二つの考えが脳内戦争を繰り広げた。
「それとだな……。私、志熊玲香っていうんだけれども……」
今頃名刺交換かい! なんていいそうになった。実際、名刺なんか交換するわけじゃないけれど、それでもそう考えられるんだ。名刺交換みたいに。
「君、気に入った! うちで働いてくれ!」
「ちょ、店長……」
「君、料理の才能とかはあるのかい? あるんであれば、是非とも歓迎だ! どうだ?」
後ろで、後峠が俺がこの洋食店へ就職するというのが気に喰わないのか、玲香に対して自分の意見を聞いてもらおうとしていた。が、そううまくは行かなかったらしく、玲香は一切後峠の話を聞かなかった。後峠に悪いが、友人Aみたいな立場だよな、後峠は。
「じゃあ、不束者ですが、料理もあんまり自身とかありませんが、こんな僕でいいのなら是非、就職させて下さい。『洋食店神上』に!」
「……はい。じゃあ、早速着替えてもらえるかしら」
「わ、分かりました」
「玲香ぁ……志熊ぁ……。俺の意見は何で聞かな……」
「他人に嫉妬しているような人間にどうこう言われる筋合いはありませんっ!」
そんなことを玲香は言っていた。玲香と後峠は結構な付き合いがあるという。そんな仲に俺は入ってしまってよかったのか、ふとそんなことを思い返す。こんな簡単に就職してよかったのかだとか。
そして、俺はなんで妹に俺の部屋の戸を蹴って壊されたから直そうとホームセンターへ行って、何故か自転車で女性にぶつかって。そして洋食店に働くことになって。……何処の超展開だよ。




