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リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第六章 タイムマシン
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6-7 未来からのメール

 俺はその瞬間、玲香の両手が上がっていた頭から両手をそっと床におろしてあげ、俺は立ち上がってその謎の女性に喧嘩腰で口ずさむ。


「お前のせいで……玲香は……死んだ」

「ああ、そうだねぇ。本当はキミを殺すつもりだったんだけどねぇ……六宮君」

「貴様……誰だ! 何故俺の名前を知って……」

「ああ、ボク? ボクは『須戸』。キミの実の許嫁。セフレだよ。キミが他の女の子に手を出したから殺しに来たんだ。今から五年後の未来からね……」


 また俺は「未来でなにかやった」ということが言われているらしい。今の俺は突然万代シテイの事件の時に聞かされ、そしてそれから須戸のクローンとか言うのがもっともっと俺を、身体も精神も崩壊させて、立ち直ろうとしたらこの有様だ。


 なんかの恨みでもあるのだろうか。いや、恨みはあるのか。俺が未来でいろんな女性に手を出した、それがこの彼女らの恨みだろう。そんなことを考えている最中、須戸というその女性は吐き捨てるように不吉な笑みを見せながらこういった。


「最終殺人遊びを初めましょう……ね、六宮英人君?」

「須戸のその挑発……乗ってやる」

「それはそれは有難う御座います……。でも、ナイフに怖がるような人間に言われたくはないんで。……死んで下さい」


 須戸は右手に持っていたナイフを俺の腹部に突き刺す。ついさっき玲香にも攻撃を受けていた身からすればこんなことへっちゃらだ。とはいえ、体力も消耗してきた。


 早期に決着を付けなければならないが、これ以上ナイフで脅されては俺も立ち向かえない。だから俺は言い放った。自分を押さえつけた。怖いから。恐怖から。でも、伝わったはずだ。


「俺は……武力なんか使わない! お前を……説得で……!」

「何処のレベルゼロの上●さんですか、え? それともなに? 私を口説きたいんですか? 須戸√ですか? 五●さんですか? ふっ……笑わせてくれる。説得なんて」

「俺は……お前を……助けたい! だから武力なんか使いたくない! だから今すぐ降ろせ、そのナイフを! 俺はゲスな人間じゃない。人のことは信頼する。だから……」

「ああ、分かります。怖いだけですよね。武力を使わない、つまりナイフが怖い、つまり貴方はチキン。チキンなんですよ。未来でも現世でもそう。貴方はチキン。それは運命」

「そんな運命……変えてやる!」


 俺は吐き捨てるよう自信満々に言う。ナイフが怖いだとかいう恐怖は、もう心の奥底に消えた。そんなことより今重要なのは『須戸を助けること』だ。俺が助けようとすると誰もかもが死ぬ。


 けれど、だからって俺は人を助けるのをやめない。人を助けたいから。助けた人の笑顔を見たいから。けれど、息絶えれば笑顔など見れないんだ。でも今の俺は今までの俺とは一線を画する。そうなんだ。もう俺は怖がりじゃない。


「俺が今までぼっちで生きてきて思ったことを話す。絆ってな、大切なんだよ。命ってな、大切なんだよ。それよりなによりもな、友達って大事なんだよ……」

「何語りだして……六宮英人」

「要はな、俺はお前と友達になりたい。だから今すぐ武器を放棄し、俺と友情契約を結んでくれ。条件はなんでもいい。酷すぎなければ何でも構わない。俺はお前と友達に……」

「おっとストップ……。残念だけれど、あと一〇秒でこのタイムマシンは崩壊するよ。つまりキミもボクもここに居る皆がここから出られず、時間の中を永遠と彷徨うんだよ。そんな世界になってもいいの? ねぇ。答えてよ」

「そんな世界になってなんかほしくないッ! じゃあ今すぐそれを解除しろ!」

「解除? 今更無理に決まっているでしょ。このタイムマシンは最新の最高峰の技術力の詰まったもの。そう簡単にパスワードはわからない。機密事項だからね」

「くそっ……。どうすれば……」


 その時、俺の頭にふと須戸のあの日の言葉が蘇った。まただ。またあの言葉が。「ボクのいうことは信じなくていい」そういう旨の台詞だ。ああ、蘇ってくる、蘇ってくる。


 けれど、今眼の前にいるのは須戸……なのか? それとも須戸の姿をした別人なのか。信じないという選択肢は本当にいいのか。数々のジレンマが生まれていく。やっぱり俺には決断力が無い。皆無状態だ。どうせなら少しくらい欲しいものだ。


「今すぐタイマーを止めろ―――――――――ッ!」


 雄叫び。大きな俺の声がタイムマシンの中全体に響き渡る。タイムマシンの中を揺らす、程まではならなかったがそれでもとても大きな声だ。須戸は、俺の声を聞いてプルプルと身体を震えさせていた。


 そして、俺が我に返り、ふと前の方を見ると、俺の目の前には白い服を着た女性が立っていた。司令官なのだろうか。もうそんなことすらわからない。けれど、自分の意識はほんの少しながら有った。まだ意識はなくなっているわけではないんだ。まだ意識はある。だから、だから俺は……死んだ訳じゃない。ここで死んでどうするんだ、俺。


「―――キミは何でボクをからかうんだ?」


 聞き覚えのある声だった。白衣を着ているためか、中々どんな姿なのか想像がつかない。だけれど、本当に聞き覚えのある声だったのだ。そう、夜に聞いた声だった気がする。


 と言っても、体型がどういうふうな感じなのか、顔はどうなのか、そういったことが一切わからない。だから俺は戸惑った。声なんか偽装するのは簡単だ。けれど、顔や体型は偽装しにくい。整形すればお手のものだが、金がない者からすれば、整形など夢に近い。


「―――ボクのことを忘れたのかい? 六宮英人」

「……え? 君は一体……」 


 もう、わけがわからない。何で俺の名前がこんなにまで知られているのか。確かに、バトル物のアニメや漫画等では、主人公の名前が敵の口からフルネーム、もしくはニックネーム、または下の名前上の名前などで呼ばれることも多々あるだろう。


 だが、こんなタイムマシンの中でそんな展開が繰り広げられても、そんなことをツッコむ暇なんか無い。まず、恐怖から逃げることで精一杯だからな。といっても、人間本当に恐怖が訪れた時は笑うらしい。それが今のヤンデレ属性の発展につながったのかもな……何語ってるんだろ。


「六宮英人。ボクの名前は『須戸』。四日前のあの日僕は君に出会った。何故殺しに行ったのかはもう他の僕のクローンから聞いているから分かるか」

「俺が未来で数々の女性を孕ませたから……だろ?」

「ああ。確かにキミは大罪を犯した。キミはタイムマシンを世界ではじめて開発した科学者。けれど、キミはそれで稼いだ金をドンドンと風俗などにさばいていった。そしてキミは数々の女性を孕ますほどの最低な人間になったんだ。だから僕は殺しに来た」

「でも何でお前は『四日後から来た』なんて言っていたじゃないか。何故未来の俺の姿がわかったんだ? 何かの超能力か?」


 須戸は首を左右に振った。俺は、何故未来のことを分かるのか気になっていた。


「キミは何か未来から来たメールを見てはいないのか?」

「いや、それといったものは……」


 否定しようとした俺だが、ふとここで気がついた。「未来の須戸から来たメールで俺は遊園地など、あらゆる所で助けられた」ということを。タワーの時も、お化け屋敷の時もそう。地震が起こるだとかもそうだ。全部未来からのメール。未来人の須戸からのメール。


「――未来人の須戸?」


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