表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第五章 無差別殺人事件、地震、そして――
49/70

5-5 地震

 午後五時前。昨日みたいな橙色の綺麗な夕焼けが空いっぱいに描かれていた。だが、一部凄く黒い雲がかかっている部分があった。あの方向は新潟市の中心市街地だ。


「なんであそこだけ上がってるんだろうね」

「さあね。なんかの予兆とかじゃないの? 当たらないだろうけどさ」


 店にいてすることもなく、結局今日は店のテレビのほうでテレビ視聴することにした。




 何事も無く、お茶を入れてすーっと飲みながらため息を付いたり、手足を伸ばしたり、目をつぶったりした。何事もなかったから。


 午後五時一二分。それは突然やってきた。


『―――緊急地震○報。緊急地震○報。強い揺れに警戒してください。新潟、山形、宮城、福島、群馬、長野、埼玉、富山』


「机の下に隠れるぞ玲香!」

「……うん」


 俺も玲香もテレビをつけっぱなしにしておいた事など、一切気にせずに真っ先に机の下に隠れた。隠れると、少しこの机の下が狭いように感じるが、今はそんなことどうでもいい。揺れが来るのを警戒しないと。


 揺れが来た。非常に強い。未だかつて俺も経験したことのない揺れだった。横揺れが続いて、途中で縦揺れが来た。グラグラと揺れていく中、店内の本棚は滅茶苦茶になっていった。原型などがわからなくなるくらいに。


 机から空を見上げると、電線がブルンブルン揺れて、今にも切れそうだ。揺れが収まって外に出る時、テレビは黒い画面になっていた。


「あれ……後峠は?」

「地下室……でしょ、きっと」

「……地下室、か。階段、繋がっているか?」


 玲香は俺の言葉を聞いて瓦礫の散乱する中を、厨房の方へ向かって向かっていった。地下室に繋がる階段を見つけたらしく、俺の方に丸サインを出してきた。だが、その場所へ向かうと、瓦礫も散乱しており、簡単に救助できる状態ではなかった。


「……ねぇ、テレビつけてよ」

「ワンセグか。情報収集には必要不可欠だからな」


 俺はスマートフォンを取り出し、ワンセグ放送を見た。現在、ネットワークの切断、東京の各在京キー局各局が爆破されたため、今は地元の放送局にしか頼れなくなっていた。


『――県内全域に大津波警報が発令されました。今すぐ避難してください。新潟市は残り六分で津波が襲来します。高台へ、なるべく高台へ逃げるようにしてください』

「後……六分」


 タイムリミットが迫る。ここは新潟市の中でも海岸に近い方のエリアだ。洋食店前の道路には、近隣の住民の方々が悲鳴を上げたりしていた。


 この向かいにマンションがあり、一二階建てで、災害時避難場所としても指定されている。避難する場には困らないのだ。だが今は、救助が先だ。移動なんて、一分足らずでできるから。今まで仲良くしてくれた奴を放っておく事は俺にはできなかった。


「……せーの」


 玲香と協力して、地下室への入り口に散乱していたものをどかし、通路を作っていった。


 地下室に入ると、その中央で後峠が意識を失っていた。足から血も出ていた。多量な出血だ。後峠の目は開いてはいなかった。


「二次災害が起こりそうだ。だが、今はまず後峠を回復させないと。……玲香、心臓に手を当ててみろ。俺は後峠の口に耳を当てて呼吸を確認する」

「大丈夫? 後峠! 大丈夫?」


 玲香が後峠の肩を三回叩く。だが、後峠は反応を示さない。


 今は緊急時。俺は冷静になろうと落ち着いていた。血を見ることは俺だってそこまで好きじゃないし、むしろ見たくもない。だけど一生に一度は見なくてはいけない。だから、今はその時だと考えて俺は応急処置を行った。


「呼吸無し。お前は、一一九番と近くにAEDがあったらそれを持ってきてくれ。後峠が呼吸していないことも教えてくれ。」

「わかった」


 玲香が俺の元を離れる。この店の何処かにAEDがあるとか、そんなことは俺にはわからない。だけど今は俺の仲間を信じるしか無いんだ。


 ――人は、一人じゃ生きれないのだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ