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リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第四章 壊れゆく日常、生まれゆく文明と問われる兄妹の絆
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4-3 聞こえた声

 玲香の手が俺の胸の上に回され、玲香が俺の身体にしっかりと掴まると、俺は体重によって下へと垂れ下がってきた玲香をまた上の方へ戻すため、少し振動を加えた。


 当然、振動を加えれば、今掴まれているこの手が俺の首に絡まり、窒息してしまうかもしれないので、普通おんぶしている人の腰辺りを持ってする。……が、今回は玲香に対してするのだ。しかも一応玲香も一女性だし、もしも俺の手が尻だとかに当たったら……。


 高まる心拍数。俺の心の中に緊張が走っていく。


「よっ……」

「ん……」


 耳元でその声はやめろ。その台詞はやめろ。俺が暴走する。暴走モードに突入する。ふっくらやわらかい感触が手についた。何がついたとは言わない。でもその感触が俺の両手にはあった。


「……変態ろくのん」

「今のは事故で、決してそういう変態行為をしようとしてしたわけでは……」

「嘘だッ!」

「嘘じゃないッ! 本当なんだ……」

「……そっか。じゃ、行こう?」


 俺は「うん」と答え、何もなかったかのようにまた歩き出した。何時もならここでちょっと問いただすはずだが。……きっと玲香も疲れているんだろうな。


 今日も玲香と寝ることになった。玲香が寝た後、俺は迫り来る眠気に対抗しようとしていた。時々襲ってくる「それ」は、俺のささやかな時間を奪う。眠気にうちかとうとして、だけれどうちかてなくて……そんな状況が続いていた。その時だ。


「……助けて」


 どこか身に覚えのある声が聞こえる。少し甲高い声だ。少なくとも、男の声ではないだろう。だとしても、こんな夜中(まだ日付は変わっていないが)に一体誰が何をしに俺の部屋へ来たのか。それが俺の中で疑問になっていった。


 目を開けると、近くには玲香ではない誰かがいた。美玲かも知れないし、もしかしたらこの俺の部屋へ入ってきた犯罪者かも知れない。でも、その正体が誰かはわからなかった。


「目を閉じて」


 俺は、その声の主が誰か分からぬままその声の主の指示した通りに動いていた。


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