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リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第三章 遊園地デート
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3-16 救助

 オレンジジュースを飲み終わった時、助けが来た。俺も玲香も顔を真っ赤にしていた時のことだ。


 まあ、周りから見ても男と女が街中や遊園地でうろつくというのは、よく考えればすぐ「デート」をしているのだと分かるはずだ。というか、ショッピングセンターでラーメンを食べたことも、アトラクションに閉じ込められたことも、全部引っ括めて「デート」なんて言うことは出来ないと思う。


 なぜなら、「閉じ込められる」なんて経験、普通はしないからな。「しない」というか、それ相応のことを「経験したくない」という方が正しいのだと俺は思う。


 でも、キスだとかそういうリア充的な意味を持つことは、「経験したくない」と思うことはないと思う。俺が元非リアだからなのか、それとも二次元を三次元と履き違えているからなのか、そんなことはわからない。少なくとも俺は、そういったイチャつきなどを経験してみたいとは思うのだろう。


 でも、いっぱいじゃなくてもいいんだ、こういうことは。友達関係と同じく、こういったことも「量より質」だからな。不倫しまくったり、ギャンブルに遊び狂うような人間と付き合うより、一途だとか、そうじゃなくても不倫はしないだとか、ギャンブル系はほどほど、またはしないだとか、そう言ったことが「質」に関係してくるのだろう。


 まあ、玲香は俺の中では「清楚で一途でハイテンションな女性」という位置づけなわけだが、人というのは外見だけではわからない。心の奥底に眠る内面を引き出してこそ、本当の本性が現れるのだ――なんて。


 俺は観覧車の中で考え事をしていると、玲香が俺の頬をつんつんとして触れてきた。そして、少し笑みを浮かばせながら俺に向かって言った。


「なんか考え事しているでしょ?」

「悪いか! 俺だってつい先日まで『非リアの大卒ニート乙』みたいな、そういうような感じだったのに、結構変わったんだなぁって。それに今は、彼女みたいなのがいるし……」

「彼女って、私のことなのかな……?」

「……」

「図星か。私もその……ろくのんは、彼氏でいいかなとは思ってみたり……?」


 こういう時は誤解してはいけないんだ。女なんて、都合のいいように男を落とす。そうさ、男はこき使われる側。女は命令する側なんだ。男は、騙されやすいんだ。女に。


 そんなことを考えていると、「馬鹿か俺は!」なんて吐き捨てるように言いたくなってきた。でも、それは抑えて、「そうか……」と言っておくことにした。


「それにしても、観覧車無料チケットが貰えるとはねぇ。事故にあって正解だったかも」

「玲香、お前は馬鹿か。もう時刻は午後四時半だぞ。あの空間で救出作業とかして、後に警察の人が来て、新聞社の人が来て、大騒ぎだったじゃねえか。それに俺達は警察や、係員に呼び止められて、事故時の状況を説明しなきゃいけなくなったし……。そんなんで、『事故にあって正解』なんて言うなって。俺らも、皆も可哀想だろうが」

「……ごめん。でも、私的には、ろくのんと二人きりで過ごせたから良かったかなぁ……なんて。あはは。何言ってんだろう。馬鹿みたい」

「……二人きりか。デートのようなこれは、最初から俺らは二人で行動していた気がするが……そういうことではないんだよな。つまり、密室空間でイチャイチャ出来てよかったってことか? そういうことなのか?」

「う、うん。まあそういうことだな。べ、別にお前が色々と誘ってきたからノッてやっただけで、他意はないんだからな! 勘違いすんなよ! みたい……」


 俺は、そういうツンデレキャラを演じる玲香を見て、耐え切れなくなって、唇を通わせた。そうしてまた透明な糸が引いていた。


 そんなロマンチックというか、観覧車でイチャイチャするという、デートの最終計画のようなものを終え、俺と玲香は帰路についた。なんだかんだで、俺と玲香は後峠と美玲にハメられたのかもれないのだが、それは仕方ないさ。一応こういった経験ができたのだから。ま、あと一歩間違えば大変なことになっていたのだろうけど。


 なにせ、俺と玲香があの回転式エレベーターを降りて五分程で、あのエレベーターは落下したらしい。幸い死者はいなかったが、俺と玲香が、現時点であの回転式エレベータに乗った最後の客というわけである。


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