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リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第三章 遊園地デート
33/70

3-12 喫茶店H.B.L.【1】

「なあ、玲香。これは一体……」


 アニメショップの右隣にあるここはメイド喫茶&執事喫茶『喫茶ハッピーブレンドランド』だ。特に深い意味もないだとかこの喫茶店を経営している社長は前に語っていたらしいが、今はどうもその発言を撤回しているらしく、深い意味もしっかりあるのだという。


「さて、入ろう」

「ちょ……」


 俺は玲香に腕を引っ張られ、抵抗する術もなくして店内へ入店することになった。


「いらっしゃいませ、ご主人様。お嬢様」


 店内に入ると、メイド姿の店員が俺と玲香を出迎えてくれた。


「お嬢様! なんていいフレーズ……ああ、もっと言ってほしい」


 どうやら玲香は目覚めてしまったようだ。それも「お嬢様」というフレーズを使用してもらい、それを言われることに。男に例えるなら「『ご主人様』というフレーズを使用してもらい、それを言われることに目覚めた」というのだ。「言ってほしい」という台詞を女が言うのと男が言うのではここまで違うというのか。


「ご注文は何にしますか?」

「じゃあ、オムライスとコーラを」

「コーラですね。お客様、カップル様でしょうか。でしたら、ストロー二本で一人分の量のコーラを持ってきましょうか」

「は、はい、じゃあ……」

「わかりました。……リア充爆発しろっ!」


 玲香は勝手に注文を進めていた。「おいおい」と俺が口出ししようと思ったが、どうせさっきもラーメン店でこんなふうになっていたから、口出しはしないでおくことにした。だが、最後に店員が「リア充爆発しろ」と言って厨房へ向かったことには、俺も驚いた。


「さて。なんでつい一時間ほど前に飯を食ったばかりなのにもう食うんだよ」

「いいじゃんか! どうせ私が残したらろくのんが全部食べてくれるよね」

「俺は雑用係かいな! 俺はそんな仕事承らないからな! 絶対にだ!」


 俺は胸で腕を組んだ。といっても俺は男だし、胸もないわけだからそういう風に膨らんだ胸を腕で支えるような構図にはならないのだが、なんとなく腕を組んだせいで俺はそれを思い出してしまった。


「注文を承ったのですが、先程『オムライスはいらない』と厨房まで響いてきたのですが、そうされますか?」


 さっき俺と玲香に注文を伺いに来たメイドが俺と玲香の前に現れ、そう聞いてきた。俺は心の中で「よくもまあ厨房まで響いたもんだな、声が」と言って馬鹿馬鹿しいようなものを見る目でため息を付いた。その一方で玲香はすごく動揺していた。


 結局オムライスの注文は撤回され、コーラ単品の注文となった。「店員さん及び中行員の皆様、大変申し訳ございませんでした」なんて言おうと思ったが、これは玲香が言うべき言葉であると思った瞬間に俺の言おうとするための気力は散っていった。

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