3-4 小屋へ-Ⅰ
玲香が居るはずのあの場所、つまり俺がさっき玲香と別れたあの場所に戻ってきた。でも、玲香の姿はなかった。
「なんで玲香が何処にも居ないんだよ。ざけんな! なんで、なんで玲香がそんな目に合わなくちゃいけないんだよッ!」
俺は一人叫んでいるから、当然周りからは白い目で見られる。でもそれを俺は別に気にはしなかった。だって、俺は元々非リアでぼっちな可哀想な男だったからな。
そしてその時、メールが届いた。
『ヒントを与える。貴様の彼女は今、大変な目に合うかもしれない状況下に陥っている。この状況を回避し、彼女を救出するためには、貴様が白髪の爺に話しかけることが必要だ。ちなみに白髪の爺は、貴様の前の前の客だ。彼に話を聞けば、貴様の彼女の居場所が何処なのかが分かるはずだ。それでは幸福を祈ることにして、我のメールは終わることとする』
俺は、そのメールが来た時に、二つ前の客、白髪の爺に話しかけた。
「あの……」
「なんだね? ……と思ったが、君は前の洋食店で働いていた―――」
「六宮です。名前を名乗るのは初めてですよね……」
「ああ、君か。名前は分からなかったが、なんとなくいい店員だとは思ったよ。それに、あの店の店長は女一人で店を切り盛りしていた。だが、最近はあの店になかなかお客様が来ないから、困っていたらしい。がしかし、あの店員が喜んでいたのは良く分かったよ。なにせ、笑顔でいたからな」
「そう、なんですか……」
「君が初めてあの洋食店で働きはじめた時、私は初めてあの洋食店を訪れた。でも、それ以前の話を何で私が知っているかというと、私の家は向かいのマンションだからだ」
「マンションなんて有りましたっけ……?」
「ああ、あるとも。今度君が洋食店に働きに行く時に見てみるといい」
ふと、俺は会話に脳が行ってしまって、すっかり本題を忘れていたことに気がついた。
「その店長が今連れ去られたというか、さっきまで居たはずなのに居ないんです……。何か分かることなどはないでしょうか……?」
爺は、頷きながら俺の方を向いた。そして、俺の肩に手を乗せる。
「あの店員かは知らないが、先程このお化け屋敷のすぐ近くの小屋から悲鳴が聞こえたよ」
「近くの……小屋?」
一体、小屋など何処にあるんだ―――あ、あった! あそこに小屋を見つけた――!
小屋があったのはお化け屋敷のすぐ近く―――ではなかった。その表現はだいたいあっているが、正確には『お化け屋敷の裏』というのがあっていると俺は思う。
「爺、ありがとう!」
「いやいや、いいんじゃ。彼女を助けるのが彼氏の役目だろ、若者よ―――」
爺の言葉はあっている。でも、俺はこの時なんとなく間違っていたんだ。だって、まだ玲香は俺の彼女ではないんだ。でも、玲香は俺の大切な、大切な、一人の女性なんだ。俺に職を与えてくれた、一人の女性なんだ。
そう思うことで心の底から自分の眠っていた俺の闘争心を目覚めさせることが出来た。




