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リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第三章 遊園地デート
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3-1 意外な妹の一面

「うぅ……眠い……」


 いつもと変わらない朝。俺は昨日妹に蹴られたこともあって、ぐったりとしていた。そして、その痛みに衝動が俺に襲ったのは、起きて間もない時であった。


「玲香……あれ?」


 玲香はそこにいなかった。そこにいたのは、なんと俺の妹、美玲だった。


「……は? なんでここに美玲がいるの?」と俺は心の中で思う。そりゃあ、朝起きたら妹が昨日の玲香の寝た定位置に居て、それでいて俺が今寝ているベットに入っているのだからな。もしかして我が妹はブラコン……? そこまでは行かないか。

「むぅ……」


 こうしてみると、女の子――といっても、美玲はもう高校生だから『女性』といったほうが正しいのかもしれない)の寝顔はとても可愛いと思う。


 デブやブスの寝顔は論外だが、デブやブスでも女性的価値、つまり料理ができるだとかそういう『家庭的』だとか、普通に接することのできる、もっというと『愛を育んでいける』、そんなような女性なら、別に論外ではないと思う。……可愛くはないがな。


「にぃにぃ……」


 ……今こいつ「にぃにぃ」って言ったよな? 「にぃにぃ」って確か、某ギャルゲの主人公の妹のキャラがよく使う言葉だよな? なんで俺の妹がこんな言葉が言っているんだ? 


「我が妹がこんなに可愛いわけがないよ……」


 あ。やべ。俺今、口に出したぞ。大変だ。これ聞かれていたら、間違いなく妹に蹴りを入れられるレベル……。


「うぅ、にぃにぃ、だっこぉ……」

「!」 


 待て。なんだ、なんで俺が今さっきの妹の言葉に反応を示しているんだ? 俺はまさかシスコン……? それは違うと願いたいが、まさかロリコン……? だとしたら、『Yesロリータ・Noタッチ』の精神は忘れないようにしよう。たとえ妹であってもな。(いや、それはシスコンとして捉えられるんじゃないのかな?)


 というか、妹は一応高校三年生だが、まだ『十七歳』だ。確実に手を出したら俺は捕まるから手を出すのは絶対にできない。


「にぃにぃ……えへへぇ。もっとほっぺぷにぴゅにってしてぇ……?」


 噛んだぞこいつ。やばいな、ますます俺がロリコン(シスコン)という概念のもと、『俺の名状しがたいロリ魂(シス魂)のようなもの』が作られていくじゃないか。今まで妹属性など一切なかったというのに。―――どうしてこうなった。


「にぃにぃのことだぁいしゅきぃ……」

「やめろ、涎垂らすな」

「……ふえ?」


 先程までの美玲の態度が一気に変貌を遂げ、いつも通りの美玲のキャラクターというか個性のようなものが形成されていく。


 俺が朝一番最初に妹に言われた言葉は、


「は? なんで私があんたと寝てんの? まさかあんた夜這いしたの、妹に? 這い寄ったの? それだとマジ気持ち悪いんですけど。マジキモ一〇〇〇パーセントなんですけど」というものだった。


 俺だって、妹に夜這いなんて考えただけで吐き気がするし、考えたくもないわ。


「おいこら。そこで某ゲーム作品ネタを使用するのはやめろ」


 と一応ツッコミを入れておく。まあ、どんなラノベでも、主人公はツッコミ役を演じることが多いからね。これもある意味、主人公の使命なのだと思う。それに、妹がネタに取り上げた作品は神だからな。


 それこそ、最初から存在意義のない主人公より、ツッコミをドンドン入れていくような、存在意義のある主人公のほうが共感というか、主人公としては合っているのだと、俺は強く思う。


「キモ。あんたが夜這いしないのに、なんで私があんたと一緒に寝ていることになってんの? ていうか、マジキモいからここから出て行ってくれない?」

「ここ俺の部屋なんだけど」

「あ? 何いってんの。ここがあんたの部屋なわけ……」


 美玲は周囲を見渡した。数々のポスターとフィギュアとその他いろいろが置いてある。ここは俺の部屋だ。俺の部屋以外の何でもない。それに気づいて、一瞬で美玲の顔が紅潮する。


「こここ、今回は間違っただけなんだからねっ!」

「……ツンデレとか。もうツンデレ妹属性とかオワコンだろ」

「ううう、うるせえ! ……でもさ、兄貴」

「急に喋り方変わったけど、一体どうした?」

「このメールのことなんだけど……」


 美玲は、自身の携帯を取り出すと、そこに書かれたメールを見せた。


「Dメー……」

「違うわ! その作品のDなんたらとは一切関係はないわ!」


 でも、俺も幾つか気になった点はある。まず一つ目は、『なぜ未来からメールが着ているのか』ということ、二つ目は、『その内容が特徴的だということ』だ。


「未来からのメールって完全にDメ○ルじゃないですか……」

「だからその言葉を使うのをやめろ! ……でさ、一つ相談があるんだよね」

「うん、どんなことだい? 人生相談かい?」

「なんでこのメールは未来から着ているの?」


 俺と同じ事に疑問を持たれても困るんだが。てか無視すんな。だがまあ、答えないわけにもいかないな。そりゃあ話題振られて話題を逸らすなんてありえないでしょ、常識的に考えて。それと俺のネタにもツッコミ入れろっての。ネタが滑ったみたいじゃないか。


「うーん、よく分からないんだけどさ、もしかしたらこの世界は存在しない世界なのかなぁ……なんて」

「うーん……何かのVRMMOの世界ですか? 仮想世界でチートを使うんですか?」

「違うよ! 厨二敵発言っぽく捉らえないでね? それにチート使うだとか、仮想世界だとか全く違うから! そこ重要だから! それに内容違くないか?」


 頼むからそう思っていてくれ。今のは厨二敵発言というわけではないはずだ。お前の言うように、考えなおすと、全く話が違うみたいだな。すまない。


「ご朝食の準備ができましたよ。マ、マ、マスター……」


 俺が美玲と会話を繰り広げている中で、玲香が途中で戸を開けた。なんだか、先程言った台詞で少しモジモジしているが、それもなんか可愛い。


「マスターって。もっといい名前あると思うけど。例えば、『ご主人様』だとか、『お兄ちゃん』もしくは『お兄様』とか」

「じゃ、じゃあその。……え、えと、ご主人、様?」


 首を傾げて少し小さな声で玲香はそう言った。なんかこう、心に来る何かがあるな。なんというか、よく分からないこの感情。これが恋心? いやいや、男子で恋心語るとか、『男の娘』以外ダメでしょう。


 でも、『ご主人様』という呼びばれるのは、とてもいいと改めて俺は思った。もしかしたら、支配する、もしくはそう言われる事が俺は好きなのかもしれない。


「さっきから隠れてないで、入ってこいよ」


 そうだ。さっきから声は聞こえているのだが、戸の方を向くと、そこに玲香の姿はない。


「は、はい……」


 何この天使――今の発言は撤回する。

 俺は、ゲホゲホと、わざと咳払いをして、冷静さを取り戻そうとした。


(だが、なんで玲香がメイド服を着ているんだ?)


 心の中で、ふと疑問に思う。なにせ、昨日の夜は俺の隣で寝ていたからな。あ、深い意味は無いぞ、特に深い意味などない。がしかし、本当に何故故に玲香はメイド服を着ているのか。


 ――まさか、玲香はメイド服を着たいと思っている変態? いや、それはないと思うが。というか、そんなのあってたまるかって話だよ。


「ご、ご、ご主人様、御朝食が……」

「……はいよ。てか、何でメイド服着ているんだ?」

「直球すぎワラエナイ……」


 隣で見ていた美玲がそういう。なんでここでそういう発言ができるんだよ、ギャルっていうのは――。


 俺の妹はギャルではないかもしれないが(というかそう願いたいが)全く違うが、『隠れブラコン』なのかもしれない、と俺はさっきから思っていたし、今の美玲の言葉を聞いた瞬間、俺は「あっ……」という言葉を小さく口ずさみ、心の中でそう思っていた。


「ええと、その、私は迷える執事ならぬ、迷えるメイドなんですよ……」

「うんと……どゆこと? つまり俺がチキンだとでも?」


 言っておくがチキンというのは、決して「鶏肉」という意味の単語ではない。俺が今言った「チキン」という言葉は、「臆病者」という意味のほうの「チキン」である。


 といっても、俺はチキンではないはず……だろう。きっと、昨日玲香と気軽に話せなかったのはきっと何かの間違いで、夢なのであろう。きっと、そうだ。


 俺は心の中で、自分のことを慰めていた。

 その時、玲香が先程の俺の質問に答えてくれた。


「そう、だと思いましゅ……」

「噛んだ?」

「う、うるさい! うるさい! うるさい!」


 玲香。ひとつ言っておくが、この態度のままメイドなんてやっていたら、確実に「もう執事として働かなくていい」だとか言われるだろ、常識的に考えて……。でも、可愛いからいいか。天使だしな。合法天使だしな。


 そんなツッコミのようなものを入れた後、ふとため息を付いた俺は、玲香の方を見た。


「な、何かついていますか?」

「ついてないよ。普通に何時もと同じじゃん」

「……嘘つき」

「え?」


 俺は、何か言ってはいけない事を言ってしまったのだろうか。それとも、騙しているのか。一体どっちなんだ……。まさか、どっちでもない……?


「嘘。特に変化したところはありませんな」

「やっぱり騙しだったのかい! まんまと騙されそうになった俺は何なんだ!」

「あはは、馬鹿みたい。でも、こうやって笑っていられるのって大事なことだよね」

「だよな」

「さて、では気を取り直して。御朝食です、お嬢さ……いや、ご主人様」

「今お前『お嬢様』って言おうとしただろ」

「ち、ち、ち、違うから! そんなこと絶対違うはずだから!」

「……ま、どうでもいいんだが」

「オチひでえな!」


 そんな風に会話しながら、俺は玲香、美玲と共に、朝飯を食べに台所へと降りていった。その時に、美玲がなにかつぶやいていた。でも、それが何を示しているのかはわからなかった。


 朝飯はごくごく普通の朝食で、食パンにコーンポタージュ、目玉焼き、レタス、ヨーグルトというものであった。


 個人的には、特に嫌いな料理もなく、楽に平らげることが出来た。


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