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リア充もいいじゃん。  作者: 浅咲夏茶
第一章 プロローグ
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1-2 帰郷して見つけた広告

 俺は『六宮英人』という名前を貰い、二三年間生きてきた。小学校、中学校、高校、大学と、嘸かしエリート街道を進んだのだろうと思うかもしれないが現実はそうではない。


 三月二七日。俺は地元、新潟に帰って来た。大学卒業後の実家帰り。東京駅から新幹線で最速一時間四〇分程度で新潟駅に到着する。とはいえ、そこに俺の家族などは迎えに来てはいなかった。家族にはここ四年間会っていない為だ。


 俺は、東京から帰ってきた、二十三歳。大学生という期間を終え、自宅のある新潟に戻ってきた。ちなみに実家は新潟県新潟市東区にある。詳しい住所等は言えないが、海沿いの方で、新潟空港から近いところにある。海岸に近いので、盆地よりは涼しいはずだ。


 そんな風に新潟に帰ってきたわけだが、俺はここでなにをするのか考えていなかった

つまり、就職等、これからの将来のことをどうするかについては一切考えていなかったのだ。新幹線の車内で考えておくべきだったのかもしれない。家に帰って、両親に報告すべきだったかもしれない。だが、「就職できなかった」と堂々言うのは大変だ。


 就職。今の時代、ただ『頭が良い』だけでは、どうにもならない。でも就職できる可能性もないわけではないので、一概には言えない。でも、そこまで有名ではない大学出身の場合、特別枠というか、有名大学の枠にはなかなか入ることが出来ないのだ。


 大学枠の問題ではないのかもしれない。なにせ、俺は『コミニュケーション能力』というものが皆無状態だ。つまり、働いた所で、ろくに店員と、その店の客、常連客とさえも会話することさえ困難になるのかもしれないのである。それは大きなハンデだ。


 そんなことを思いながら、俺は実家の入り口、つまり玄関の前に立った。そうしてインターホンを使用して親に自身の成長した顔を見せた。まあ、本当に成長したかなど、俺には知ったこっちゃないのだが。


「父さん? 母さん?」


 俺はあまりにも反応がないので声をかけた。でも、二人共呼びかけに反応しない。

 家のインターホンは最近主流となっている、顔を画面に写して、しっかりと確認をした後に扉を開けるように指示を出せるような、防犯重視のものである。故に、両親の許可なしでは入ることは出来ない。


「おい」


 やはり反応がない。


 仕方なく、俺は家の裏口にある方の裏玄関から入ることにした。いわゆる『勝手口』というものだが、俺は昔から『裏玄関』と呼んできた為に、少々癖がついてしまっているようだ。


 俺が実家にいた頃は、裏玄関の戸の鍵が大体開いていたので、夜遅くに帰宅したりする場合はここから入っていた。


「さ、開けますかね……」


 少しため息を付いて、ドアノブを掴み、回す。ガチャ、という音が聞こえた後、それが証となって、『キィィ』という音を立てて勝手口のドアが開いた。


「やっぱり、ここは昔のままなんだな」


 少し笑みが現れる。皆きっと味わったことがあると思うのだが、なんだか実家に帰るとたまにこういう和やかな気持ちになることがあるが、あれはなぜ起こるのだろうか。俺はふと疑問に思った。「そういうことを言える年齢になったんだ」と、言いたいところだ。


 台所を過ぎ、いつもくつろいでいた場所へ向かった。リビングだな。というか、最初からリビングって言うべきだったか。まあ、この場所も先程ふと感情を漏らしてしまったとおり、昔俺がくつろいでいた場所である。「懐かしいな」とそんな中でくつろいでいる両親を発見した。


「なんだよ……。寝てたのかよ。全く……」


 ため息を付きソファに手を掛ける。そうして俺は目を瞑り自分で安らげるようにした。


「全く、静かすぎて死んだかと思ったじゃねえか。ちょっとくらい察しろっての……」


 そういった後、俺は実家に戻ってきたということを伝え、バイト探しをしようと街中を歩き出した。


「バイト探し……か」


 左右をキョロキョロと見ながら、バイト募集のポスターがないか見てみた。が、結局そういうようなものは見当たらなかった。


 というか、もう俺は二十三歳なのだから、別に正社員とかでもいいのではないだろうか。


 その時、ある広告を俺は見つけた。それが今の俺の彼女との出会いをうむ、運命の広告だったのである。その広告の内容は、次のとおりだった。


『バイト募集中! 洋食店を一緒に経営いてくれる男性居ませんか? 出来れば料理ができる方がいいです!』


 ――だそうだ。俺は料理が不得意というわけでも、得意というわけでもなかった。一般的なカレーや肉料理(ハンバーグやステーキ)は一応作れる。弁当だって自分で作っているが、豪華な料理店で出されるような味ではないし、豪華料理店で出されるような華麗な料理でもない。


 でもまあ、やってみる価値はありそうだと思い、その洋食店へと向かった。

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