2-4 寝起きとパーティー会場
気がつけば、おかゆの入っていたお椀の中は空っぽだった。そこにレンゲが置かれていたので、俺はすぐに、「志熊は全部食ったんだな」と察した。
体を横に向けると、ぐっすりと眠っている志熊の姿があった。
「ちょ……」
俺がガサゴソ動いたせいで、志熊は目を覚ましてしまった。
「ねぇぇ……今何時ぃ……?」
俺は時計を見て、時間を伝えた。現在時刻は午後五時三〇分だった。
「五時半だ」
「朝のぉ……?」
「夜だ。いや、正しくは『夕方』だが」
「えぇ……? まだ夕方なのぉ? 本当にぃぃ?」
志熊はふらふらしていた。そうして、俺の方に倒れてきた。
「おい志熊! 大丈夫か……?」
「大丈夫だよぉ。れいちゃん最強だもぉん」
俺は、『れいちゃん』という志熊の吐いた一言が気になり、志熊に問う。
「『れいちゃん』ってどういうことなの……?」
「『れいちゃん』というのは、志熊の後に続く名だ。『玲香』というものをもじって付けられたニックネームだ」
答えたのは、志熊ではなく、後峠だった。
「後峠……!」
「我は後峠などというクソみたいな名前ではないッ! 我の名は、『超波炎師』だ!」
いやいや、自分の苗字に喧嘩売っちゃダメでしょう、後峠君。だが一つ、『れいちゃん』というのが、一体どういう由来だとかは教えてくれてありがとうな。
「さて、今日は鍋パーティーをしようと思う」
「いやいや。まだ志熊、体調優れてないでしょ……」
「いや、それは誤解だよ、ろくのみやきゅん」
「え?」
俺は少し気になった。志熊の体調が優れているというのであれば、さっきまでのあれは、演技ということに……! だがしかし、よくもそんな渾身の演技が出来るものだ。凄いよ。
というか、さっき後峠が俺のことを『ろくのみやきゅん』と言っていなかったか?
俺が志熊の方を見ると、志熊は一気に元気になった。
「志熊が元気……だと? つまり志熊は今まで演技をしていたと……?」
「え、演技なんかじゃないやい! あれはその、本当に風邪ひいたっていうか、簡単に言うと、あれは演技じゃないよ!」
何か怪しいと思うのが俺なわけだが、これ以上疑いたくもないな。機嫌悪くさせたら可哀想だし。
「でも、今は元気なんだね」
「うん。だからパーティーには参加できると思うよ」
「そっか。じゃあ行こうか、パーティー」
「おう!」
そうして俺達はパーティー会場へ向かった。




