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3話目

 ゴブリンたちが逃げ去った後、小次郎たちはとりあえず場所を移すことにした。

 ライラのうんこが臭かったためだ。


「私はこの先にある村へ向かっていたんだが、君もついてきてくれないか。少し、話をしたい」


 ライラの言葉に、小次郎は頷く。

 異世界に来て初めて出会った人である。小次郎も、ライラと共に行動したかった。


「僕の名前は小次郎といいます。お姉さんの名前を教えてください」


 自己紹介をする小次郎の姿に、ライラの口元がほころぶ。


「ずいぶんと礼儀正しいのだな、小次郎は。だが、敬語は不要だ。子供に敬語を使われるとむずがゆい。

 私の名はライラ。ライラ=アロック。この国で騎士を務めている。

 呼び捨てでも何でも、好きに呼んでくれ」


「じゃあ、ライラお姉ちゃんで」


 さすがに、会ったばかりで年上の女性を呼び捨てにするのは抵抗があった。

 とはいえ、敬語は不要で呼び捨てにしてもいいとまで言ってくれたのは、親しくなろうという気遣いからだろう。

 ならばさん付けではよそよそしすぎるのではないか。

 とっさにそれだけのことを考えて決めた呼び名だった。

 

「ああ、それでかまわない。

 ところで、ひとつ聞きたい事がある。小次郎は、予言の勇者なのか?」


 予言の勇者。先ほども、ライラはこの言葉を呟いていた。

 もちろん言葉の意味は分かるが、小次郎がそうであるかについては心当たりがない。


「さっきも言ってたね。予言の勇者って?」

 

 問いに問いを返してしまったが、ライラが小次郎の無作法を咎めることはなかった。


「知らないのか? ……いや、小次郎が予言の勇者なら、知らなくてもおかしくはないか。

 そうだな、どこから話せばいいか。まず、女神様については知っているか?」


「うん。たしか、メルート様だよね?」


 この世界の女神のことを言っているのだろうとあたりを付け、小次郎は答える。

 ライラは一つ頷いて、説明し始める。


「そうだ。女神メルート様は、我らの世界をお守りくださっている。

 そして、メルート様のお力を借りることで、我らはわずかな奇跡――すなわち、『魔法』を使うことが出来る」


「『魔法』……」


 この世界には魔法がある。

 剣や鎧で武装した女騎士のライラに、見たこともない緑色の生き物であるゴブリン。そういうファンタジーを目の当たりにしていた小次郎にとって、その事実は驚くよりもわくわくすることだった。


 だが、わくわくしていた小次郎にとっては残念な説明が続けられる。

 

「そう、魔法を使うことが出来る。いや、出来た、というべきか。

 実は、半年ほど前からメルート様のお力を借りることが出来なくなった。

 メルート様がどこかに封印されてしまったのだ。

 おそらくは魔王の仕業だろう」


 またファンタジーな言葉が出てきて、思わず小次郎は聞き返す。


「魔王なんているんだ」


「ああ。先ほど見たゴブリンたちのような生き物を魔物という。

 魔物を束ね、人に徒名す者――魔王メイアナート。

 私たちは、メルート様のお力を借り、魔法を用いて奴らと戦っていた」


 つまり、魔王は魔法を使わせないために女神を封印した、ということだろうか。

 魔法を用いて戦っていた人々が魔法を使えなくなったら、一方的に不利になる。


「じゃあ、いま負けてるの?」


 魔法を使えなくなり、不利になった人間側。

 予言の勇者とは、まさか魔王を倒し人々を助ける存在なのか。

 たしかに、かつて小次郎は、カンチョーを極めて人々を幸せにすることを誓った。

 だが、幼い小次郎の心に、人々のため命を賭けて戦う覚悟まであるといえるのか。


 ぶるりと震えた小次郎だったが、続くライラの言葉は予想と違っていた。


「いや、負けてはいない。

 メルート様が封印され我らは魔法を使えなくなったが、同時に魔王もまた姿を消したらしい。

 おそらくはメルート様が魔王を抑えているのだろうと推測されているが……。

 統率する魔王がいなくなったおかげで、魔物たちは組織立った行動をしなくなった。

 おかげで、魔法が使えなくとも何とか撃退できている」


 魔王がいなくなった、という言葉に拍子抜けする小次郎。

 では、予言の勇者というのはいったいなんなのだろう。


「じゃあ、予言の勇者って?」


「メルート様のお力を借りられなくなった日、教会の聖女がひとつの予言を授かった。

 曰く、異世界の女神の加護を受けた勇者が、異世界よりこの世界に降り立ち、メルート様をお救いするだろう、と」


 そこで言葉を区切り、ライラの目がまっすぐに小次郎を見つめる。


「小次郎、君はメルート様が封印されたこの世界で、私の身体から毒を消すという奇跡を行った。

 メルート様以外の女神様の加護を強く受けているんじゃないか? 君が、予言の勇者なんじゃないか?」


 どこか疑われているような、信じられていないような気配を、小次郎は感じる。


 もっとも、それも仕方がない話であった。

 戦いが不利になったわけではないため、予言の勇者だけが最後の希望、というような期待のされ方はしていないこと。

 小次郎はカンチョーを至高のものと考えているが、ライラにとってはそうではないこと。

 ライラの身に起こった解毒という奇跡はたしかにすごいが、その方法がゴブリン(及び小次郎の)目の前での公開脱糞であったこと。


 諸々の事情により、ライラにとって小次郎は、予言の勇者っぽいけどなんか違う、いやむしろ違っていて欲しい存在なのである。


「うーん? それは僕にもわからないよ。

 たしかに、僕はこことは違う世界から来たし、その世界の女神様……女神ルティア様から加護を受けてるよ。

 メルート様に会って、元の世界へ返してもらうつもりだったんだ。

 でも、メルート様を救えって、ルティア様に言われたわけじゃないんだけど」


 救えではなく、肛門を穿てと言われた。

 もちろん小次郎は考えなしに何もかもしゃべるような子供ではないため、メルートと出会った後に何をするかまで話したりはしない。


 小次郎の言葉に、ライラは少しほっとしたような表情を浮かべる。


「そうか……。

 では、分かりそうな者に聞いてみるとしよう」


「分かりそうな者?」 


「私たちの向かっている村には、大賢者と呼ばれる者がいるらしい。

 大賢者ならば、きっと小次郎が予言の勇者かどうか分かるだろう」

 

 あの村だ、とライラが指差す先。

 小さな建物がいくつか寄り添って立っているのが見えた。



 













 予言の勇者っぽい小次郎を伴い、ライラは村へと歩いていく。

 建物の窓や扉がはっきり見え、村人がいればその姿が視認できるだろう距離まで近づいて、ライラは立ち止まった。


「……何か、変だな」


「そう? 僕にはわからないけど」


 きょとんとする小次郎。可愛らしいその姿に、少し和む。


 奇跡を起こす手段がカンチョーでさえなければ、礼儀正しく可愛らしいこの少年がきっと予言の勇者なのだろうと、素直に信じられるのだが。

 カンチョーではな。

 カンチョーで女神は救えないだろ。

 女神は便秘か何かで動けないとでもいうのか。


 いや、考えるな。考えても仕方がないことだ。


 気を取り直し、ライラは小次郎に違和感を説明する。


「村には普通、魔物が来たときに速やかに対応できるように見張りがいるはずだ。

 だが、あの村には見張りがいない。

 遠目だが、見える範囲に村人がいないように見える」


 不穏な考えが口調に宿ったか、その言葉を聞いた小次郎が少し身構える。


「もしかして、魔物に襲われた?」


「……いや、それにしては戦いの気配を感じないな。

 魔物に襲われた村は火に焼かれるし、この距離なら血の匂いが漂ってくるはずだ」


 その光景を想像したか、小次郎がぶるりと震えた。

 怖がらせてしまっただろうか。申し訳なく思い、その肩に手をかける。


「すまない、怖がらせたな。

 安心しろ。たとえ魔物がいたとしても、君だけは私が守る」


 予言の勇者であろうとなかろうと、子供を守るのは騎士の務めだ。

 なにより、恥をかいたとはいえ小次郎はライラの命の恩人である。

 命の恩は命で返す。それが騎士というものだ。


「ありがとう、ライラお姉ちゃん」


 ライラを安心させるように、小次郎が笑ってみせる。

 可愛らしい笑顔と、お姉ちゃんという言葉に、一人っ子だったライラは不覚にも嬉しさを感じた。


「ああ、まかせておけ」


 この少年だけは守らなければ。

 あらためて決意を固め、ライラたちは村に踏み込んだ。








「ゴブゴブゴブゴブ!(来たぞ! あのキレッキレの女だ!)」


 村に踏み込んだライラたちを出迎えたのは、野卑なゴブリンの鳴き声だった。


「なにっ! ゴブリンだと!?

 まさか本当に魔物に襲われていたのか!」


 戦いの気配がないため、何か起こっていたとしても魔物ではないとライラは予想していた。

 しかし、村に入り込んだゴブリンの姿に、予想が甘かったと歯噛みする。


「ゴブゴブゴブゴブ(こっちへ来い。ブラックオーク先輩がお待ちだ)」


 なにやらゴブゴブ言って、こちらへ来いというようなジェスチャーをするゴブリン。

 罠っぽい誘いにライラは警戒する。

 いなくなった村人たちのことは気になるが、小次郎をつれている今、罠のような誘いに乗ることなどない。

 不意打ちで毒を喰らったあの時ならいざ知らず、一体程度のゴブリンなどライラは容易く倒せる。

 こいつを倒して小次郎を連れて逃げる。それがライラの選択すべき最善の選択肢だ。


 そう考え、腰の剣に手を伸ばしたライラだったが、それが抜かれる前に小次郎が叫ぶ。


「ライラお姉ちゃん! 村の人たちがあそこに集められてる!」


 小次郎の指差す先、村の広場のような場所に、数十人の村人が座らされているのが見えた。

 その中央、円状になった村人を威圧する黒い生き物の姿を見て、ライラの背筋に冷たいものが走る。


 ブラックオーク。

 魔法が使えた頃でさえ、騎士が数人がかりでかからなければ倒せない危険な魔物。

 あの魔物がいたせいで、村は勝ち目がないと降参したのだろう。そのために戦いの気配がなかった。


 ブラックオークがまっすぐにこちらを見ている。

 狙いはゴブリンたちを追い払った、予言の勇者かもしれない小次郎か。

 ダメだ、小次郎をブラックオークの元に連れて行くわけにはいかない。


 ここでゴブリンを切り捨て、村を見捨てて全力で逃げる。

 ブラックオークに追いつかれたら、命を捨てて足止めする。


 小次郎を、なんとしても守り通す!


「待って、ライラお姉ちゃん! 村を救わなきゃ!!」


 ライラの考えを感じ取ったのだろう。小次郎が叫ぶ。

 可愛いことを言う。本当に、この子は勇者なのかもしれない。


「すまない、小次郎。だが、私ではあのブラックオークに勝てない。

 君だけは必ず守る。だから、すまない。納得してくれ」


 剣を抜く。ゴブリンが慌てる気配。ブラックオークはまだ動いていない。

 いまなら逃げられる!


 だが、ライラの剣は、他ならぬ小次郎によって止められた。


 ライラの手首が小次郎に掴まれる。

 思った以上に強いその力に、ライラの手が止まる。


「ライラお姉ちゃんが、僕の命を助けようとしてくれるのは分かる。

 でも、僕は村の人たちを救いたい。

 僕の願いは、カンチョーで人を幸せにすることだから。

 ここで誰かを見捨てたら、その願いはかなわないと思うから」


 信念のこもった真っ直ぐな瞳に、ライラの心が貫かれる。

 カンチョーで人を幸せになど出来ないとか、そんな突っ込みすら届かない、熱い想い。


「たとえ僕が予言の勇者じゃなくても、僕が女神ルティア様の加護を受けている事実は変わらない。

 僕が奇跡を起こすから。ブラックオークに勝つ奇跡を起こすから。

 だから、ライラお姉ちゃん。この村を助けるために、力を貸してください」


 お願いします、と頭を下げる小次郎の姿に、ライラは苦笑を浮かべる。


 この様子では、無理矢理つれて逃げても、一人で村に戻りかねない。

 なにより――こんな幼い少年が勇気を見せているのだ。

 騎士が、逃げていいはずがないじゃないか。


 この子を後ろにおいて戦うならば、たとえ魔王にだって勝ってみせよう。


 剣をしまう。ほっと息をつく小次郎に、大変なのはこれからだとまた苦笑する。


「いいだろう、薄汚いゴブリンども! その誘いに乗ってやる!

 たとえブラックオークだろうが、いまの私を殺せると思うなよ!」


 ライラの咆哮に、ブラックオークがニヤリと嗤ったように見えた。









 村の広場には、地べたに座らされる数十人の村人と彼らを監視する十数体のゴブリン、そして一際目を引くブラックオークがいた。

 真っ黒な肌と、異様に発達した筋肉の肉体を持つ、豚顔の魔物である。

 屠った獲物だろうか、虎の毛皮を下半身に、熊の毛皮を上半身に巻きつけており、歴戦の戦士である事がうかがえる。


 ブラックオークは村の広場の中央で、腕を組んでこちらを威圧していた。


「オクオクオクオク(来たか、キレッキレの人間の女よ)」

 

 ブラックオークがなにやら語りかけてくるが、ライラには魔物語はわからない。

 ただ、すぐに襲ってくるわけではなさそうだということは分かった。


「ゴブゴブゴブ(おら、ブラックオーク先輩までの道をあけろ!)」


 ゴブリンたちが村人たちを動かし、ライラとブラックオークとの間に一筋の道が出来る。

 ブラックオークと周りのゴブリンの様子から、ライラはピンと来るものがあった。


 これは決闘だ。


 村人たちを人質に使われて小次郎を殺される、という最悪のシナリオまで想定していただけに、ライラは少し安堵する。

 無論、ブラックオークは強敵だ。楽に勝てる相手ではない。

 だが一対一の戦いならば勝負はどう転ぶかわからない。わずかであるが、勝機が出きたのである。


「騎士様……」


 不安そうにライラを見つめる村人たち。

 彼らを安堵させるため、堂々と胸を張って、ライラは村人たちの間を歩く。小次郎も、ライラの隣でキッと前を見据えてついてくる。


 広場の中央で、ライラはブラックオークとにらみ合った。

 異様なその雰囲気に、村人たちもようやく、何が行われようとしているのか悟ったらしい。


「決闘だ……」


「騎士様とブラックオークの決闘だ……」


 そんな囁きが、座らされた村人たちから漏れる。


「ゴブゴブゴブゴブ!(決闘だ! ブラックオーク先輩の決闘だ!!)」


 ゴブリンたちも騒ぎ出す。


 熱気に包まれた広場で、ライラはごくりとのどを鳴らした。

 ブラックオークが顔を歪めて嗤う。


「オクオクオクオク(さぁ、始めようか、キレッキレの人間の女よ)」


 そして――








 ブラックオークは、下半身に纏っていた虎の毛皮をおろし、うんこ座りになった。






「…………うん?」


 目が点になるライラ。

 村人たちも、妙な雰囲気に戸惑う気配がする。


 だが、ブラックオークは至極真面目な表情をしているし、ゴブリンどもからは戸惑う気配がない。


 なんだ? いったいどういうことだ??


 疑問で頭がいっぱいになるライラの隣で、小次郎が声を上げた。


「そうか! ゴブリンたちはライラお姉ちゃんのうんこしながらの威嚇に逃げ出した!

 つまりこれは、うんこしながらの威嚇勝負なんだ!」


 ……………………うんこしながらの威嚇勝負?


「いやいや、何がそうか! だ。そんなわけがあるか」


 否定したライラだったが、なんとなくそれが正しいんじゃないかという思考が沸いてくる。

 いやしかし、あの時はゴブリンと子供の前だったが、今は大勢の村人たちも見ているんだが。

 普通に……。普通に決闘しようよ……。


「僕に任せて! ライラお姉ちゃん!!」


 明るい声を上げる小次郎に、いやな予感がこみ上げる。


「待て、小次っ――んはああああああああああああっっっっ!!!!」


 止めようとしたときにはもう遅かった。

 ライラの肛門に突き刺さる小次郎の指。

 その指から、異世界の女神の加護が流れ込んでくる。


 生れ落ちて18年、いまだかつてないほど、ライラの大腸が生き生きとし始めた。


 このままでは漏らす。


 もはややるしかあるまい。


 ズボンと下着を引き摺り下ろし、ライラもまたブラックオークの前でうんこ座りになる。


「騎士様……? お気を確かに!」


 村人たちがざわついているのが聞こえるが、ライラは無視した。

 何もかも、ブラックオークが悪いのだ。


 ライラが自分と同じポーズをとったことを確認し、ブラックオークが嗤う。



 そして――



 ブリブリブリブリブリ!!!


 ウンチの出し合い、メンチの切り合いが始まった。


 立ち込める異臭。鳴り響く脱糞音。その中央で睨みあう戦士たち。


 歴戦の戦士であるブラックオークの威圧は、さすがのものがあった。

 ライラ一人に叩きつけられた威圧の余波だけで、村人たちが震え上がるほどだ。


 だが、ライラも負けてはいない。

 こんな決闘しやがってぶっ殺す、という憎悪をこめた殺気は、ブラックオークの威圧に負けず劣らず凄まじいものだった。


 ぶつかり合う威圧。

 その余波が、物理的な風を生み、異臭を村全体に広げていく。

 この匂いはしばらく取れることはないだろう。


「何がなんだかわからねぇけどすげぇ! そしてくせぇ!」


「ゴブゴブゴブゴブ(先輩のメンチに一歩もひかねぇ! やはりあの女、キレッキレ!!)」


 メンチの切り合いは互角であった。


 ならば勝負は、ウンチの出し合いで決まる!


 村人たちは直感でそのことがわかったのだろう。

 誰からともなく、ライラを応援する声が上がる。


「うおおっ! 騎士様!! うんこ! うんこ! うんこ!!」


「うんこ! うんこ! うんこ!!」


 怒涛のうんこコールである。

 羞恥と怒りでライラの頬に朱が差した。


 ゴブリンたちも負けてはいない。


「ゴブ! ゴブ! ゴブ! (うんこ! うんこ! うんこ!)」


「ゴブ! ゴブ! ゴブ! (うんこ! うんこ! うんこ!)」


 ゴブリンたちによるうんこコール。

 任せろとばかりに、ブラックオークが腹に力をこめる。


 ブリブリブリブリッ!!!!


 一際音が大きくなり、勢いを増すブラックオークの脱糞。


「あああっ! 騎士様!!」


「騎士様負けないでください!!」


「うんこ! うんこ! うんこ!!」


 村人たちの悲嘆の声。

 もはや諦めの境地で腹に力をこめるライラ。


 ブリブリブリブリッ!!!!


 ライラの脱糞も勢いを増し、ブラックオークの勢いに追いつく。


 ブリブリブリブリッ!!!!


 ブリブリブリブリッ!!!!


 排泄音の二重奏。

 その世界一汚いハーモニーはなんと5分以上も続き。


 そして、ついに決着がつくときがきた。


 ブリッ…ブピッ…ブリッ……


 ブリブリブリブリッ!!!!


「ゴブゴブゴブゴブ(ああっ! 先輩のうんこが……うんこが終わる……)」


「おおっ! 騎士様が……騎士様が勝つぞっ!」


 そう、ついにブラックオークの大腸が、蓄えていたうんこを出しきったのだ。

 一方、女神の奇跡を受けたライラの大腸と肛門は、まだまだ元気にうんこを出している。


「ゴブゴブゴブゴブ(何なんだあの人間の女……魔法のうんこ袋か何かか!?)」


 ゴブリンたちが悲鳴を上げる。


 そして、それからすぐに、勝負は決した。


 ブリッ…プリッ…プー…


 ブリブリブリブリッ!!!!


 断末魔のような放屁を最後に、うんこを出し終わったブラックオークと。

 ここ数分の排便では出しきらぬとばかりに脱糞を続けるライラ。


 勝敗は明白であった。


「オクオクオクオク(認めよう、人間の女よ……。貴様は、この俺よりもキレッキレ!!)」


 ライラを讃えるように、うんこ座りのままブラックオークが何かをいう。

 そして、ブラックオークは脱いでいた虎の毛皮を下半身に纏い、立ち上がった。


「オクオクオクオク!!!(子分ども! 俺の負けだ!! 引き上げるぞ!!)」


 ブラックオークの咆哮が村中に響く。

 村人たちを監視していたゴブリンたちがいっせいに動き出し、村人を解放する。

 そのまま、ブラックオークたちは村から出て行った。


 意外なほどにあっさりと出て行ったブラックオークたちを、またもや呆然と見送るライラ。

 その脱糞はまだ終わらない。


「……おい、小次郎。私のうんこは、いつ終わるんだ?」


 小次郎を怒ってはならない。すべてはブラックオークが悪いのだ。そうとも、小次郎は村を救うために奇跡を起こしただけだ!

 無理やりそう考えて、声に怒りが含まれないよう、あえてニコニコしながらライラは問いかける。

 が、なぜか小次郎はビビッたように後ずさりして答えた。


「ぼ、僕にもわからない……」


「そうか……」


 怒ってはいけない。切れてはいけない。


 そう自分に言い聞かせるライラの元に、村の代表であろう老人が近づいてくる。

 まだ脱糞を続けるライラに、老人は涙を流しながら土下座した。


「村を救ってくださりありがとうございます!

 騎士様のうんこは奇跡のうんこ!!

 村の宝として代々にわたって保管させていただきますぞ!」


「やめろ!」


 ライラはマジ切れした。 

字数配分を間違えたくさい。

ファンタジーで女騎士といえば汚れ芸人、みたいな風潮に一石を投じたいですね。

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