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異世界英雄式のつまらない解き方  作者: 四四 カナノ
第一件 異世界からの訪問者
8/71

8 狐+火

「久しぶりに長くしゃべったタケを見た」

 廊下を並んで歩く裕也がまず言ったのが、それだった。

 それについては、僕自身も同感だった。ほとんど勘と出任せでしゃべっただけだけど、当分しゃべりたくない気分だ。

「それにしても、よく副会長を黙らせたな」

「別に」

 黙らせるつもりはなかった。話そのものは事件の不思議さを強調しただけだが、それで十分だと思った。そのことを生徒会役員に話してくれれば、対応に慎重さが出てくるだろう。慎重になれば対応が遅くなるし、不測の事態も出にくくなる。その間に事を終わらせればいい。教師のほうは認定試験合格者として行動すれば、何とかなるだろう。

「元からそういうつもりで連れて来たんだろ?」

 裕也が僕を連れて来た理由は、認定試験合格者としての行動を主張する。そんなところだろう。そうすれば、少しは自由に動けるかもしれないからだ。

「おかげで、いくらか怪しい行動をしても何とかなるかもしれない」

「詳しいことは?」

「ああ、そうだな」

 裕也は、視線を少し上げて、天井を見上げながら歩く。

「モニュメントと大岩の件は、例の物の入れ替えとよく似ている。地面が軽くへこんでいたり、それ以外の痕跡が特に見当たらなかったり、ほぼ同じ現象だ」

 裕也は、いつの間にか共通点を導き出していた。情報収集のためにいろいろ調べたり、セリアに聞いたりした結果だろうけど、こういうことは裕也の得意分野だ。

「ただ違うのが、入れ替えた物がその場になかったことだ」

 確かに消えたとしか聞いていない。

「考えられるのが、誰かが持ち去ったか、自分で移動したか」

「自分で?」

「入れ替える物の共通点なんだが、セリアによると魔力の含有量がほぼ同量の物を入れ替えているんだと。それが、この魔法の使用条件らしい」

 魔法は、使うのは簡単だが、使うための条件が個々に設定されているそうだ。特定の場所でしか使えなかったり、時間に制約があったりする。条件は、簡単だったり、複雑だったり、複数あったりするそうだが、使用条件のない魔法は存在しない。

「だから、魔力の含有量が同じなら生き物でも入れ替えられることになる」

 仮に裕也のいうとおりならば、何が入れ替えられてもおかしくない。

「で、火の玉と乾麺の件だ。取り外された看板を見てきたんだが、丸い物が突き抜けたような穴が空いていた。で、その穴の淵は、さっき言ったように焦げてた。たぶん、木のほうも似たようなもんなんだろう。だけど、それだけだ。看板が燃えて全面黒炭になっていたりはしない」

「火の玉のことは?」

「一発だけ、グラウンドの上空へ上がったとさ。教室の窓からもはっきり確認できたみたいだ」

「乾麺のほうは?」

「教室を回って、話だけ聞いてきた。どこも似たような反応だったよ。気づいたら空の袋があったってな。特に気づいたこともないそうだ」

「方法は、魔法?」

「たぶん、そうなんじゃないか。ちょっと普通じゃ考えられないし、魔法は何でもできるみたいだしな」

「理由は?」

「火の玉のほうは分からないが、乾麺のほうは食料としてだろう」

「入れ替えの現場で似たような騒ぎは?」

「ねえな。ついでに言うと、こんなに近くで入れ替えを続けることもなかった。最低でも一キロは距離を開けてる」

「……」

 今までとは異なる状況になっている。それは、例の精霊の心変わりか、裕也の言うように自分の意志で動く者が入れ替わりで来たからか。それとも、もっと別の事態なのか。推測はできても結論は出ない。

 いつの間にか、中央校舎を抜けて東校舎に入っていた。階下からは、楽しそうな喧騒が聞こえてくる。すでに一般の来場者が校舎の中に入ってきている時間だ。

「……裕也の文化祭の予定は?」

「は?」

 裕也は、間抜けな声をあげて僕の顔を見た。

「裕也も楽しむんだろ?」

 僕は、階下の喧騒を聞きながら尋ねた。裕也はお祭り好きだから、いろいろ楽しみにしていただろう。知り合いの所に寄ることも考えていたかもしれない。

「いや、こっちのほうが大変だろ?」

 やはり、文化祭よりもこの件にかかわるつもりだ。

「認定試験合格者として動くなら一人のほうがいい」

「そうくるかよ」

 裕也の表情が、嫌そうにゆがんだ。裕也の言い出したことだから、否定することは難しいだろう。

 答えが返る前に、裕也の口からため息が漏れた。

「分かったよ。軽く回りながらにする」

 その答えを聞いて僕は安心したが、裕也としてはそれで引き下がるはずもなかった。

「ただし、何かあったらちゃんと呼べよ。一人で解決しようとすんな。いいな?」

「分かった」

「それと、加賀に顔を見せとけ」

 現在、光は三階で仕事中のはずだ。教室を出てくる前に見た限りでは、落ち着いていた。ちゃんと仕事をこなしているだろう。

「……なぜ?」

 事前の打ち合わせでは、男子は店に極力近づかないことになっている。特定の人物と親しそうなところを見せてはならないとか何とか、コスプレメイド喫茶実現委員(実動係)から厳しく言われている。そのことは裕也も知っているはずなのに、どうしたのだろう?

 裕也が、言いよどむ。

「あー、何つうか……、そうだな、タケは、この機会にちゃんと見とけ。で、感想なんかを後で加賀にでも話してやれ」

「……反省会とか?」

「いや、そうじゃなくて、加賀に感想とか、思ったことを言ってやれ」

 笑顔で裕也は、僕の肩に手を置いた。

 その笑顔が作り笑いに見えるのが気になるが、そんなに変なことを言っているようにも感じない。何を気にしているのか分からないが。

「思ったことなら言ったけど」

「いつ?」

「今朝」

「何て?」

「……似合っているって」

 裕也の笑みから硬さが取れた。そして、僕の肩をパンパンと連続で叩く。軽く痛い。

「そうか、そうか。なら良いんだ。いつの間にかタケも成長してたか」

「……何が?」

「こっちの話だ。気にするな。じゃあな」

 裕也は、一方的に話を切り上げて階段を下りて行った。

 何がなんだか分からなかったが、とりあえず問題なさそうなので気にしない。裕也も「気にするな」と言っていたのだから大丈夫だろう。

 僕も階段に足を向けた。だが、踏み出すのは下の段ではなく、上の段だ。

 まずは、屋上から観察してみようと思った。何か変化があれば目に付くだろうし、火の玉の飛んだ方向やモニュメントなどの消えた場所も眺めてみるつもりだ。

 屋上へと続く鉄の扉を、重苦しい音を引きながら押し開けた。


 ◇


 屋上に出ると空は快晴だった。裂空間はきれいな朱色で、ところどころに白い雲が流れている。

 屋上に視線を移すと頑丈なフェンス、無機質なコンクリートが眼前に広がり、その片隅に赤いものが見える。

「……」

 いつもは見ない赤いもの。それが、屋上の隅に丸くなっている。

 特設ステージではイベントが行われているらしく、グラウンドから歓声が沸いた。それに合わせて、赤いものも驚いたように震えた。風が吹くとその表面がふさふさと揺れる。

 僕は、赤いものに注意を向けながら静かに扉を閉めた。古くなってさびている屋上の扉は、甲高い音を鳴らして閉じる。

 赤いものは、そんな音にも敏感に反応して細かく震える。

 先ほどから小刻みな動きしか見ていないので、その場で立ち尽くしてみる。いろいろ状態を確かめてみたかった。

 こちらが動かないでいると赤いものもその場で動かずにいる。周囲に気を配っているのかもしれない。

 

 約三分経過。


 赤いものの背後から何かがゆったりと動いた。丸くもまっすぐにも見えるそれは、ふさふさと軟らかそうに見える中でもよりふさふさ感がある。それは、尻尾のようだ。右に左に揺らしてから体にピッタリとくっつけた。

 それからまた動かなくなった。


 約五分経過。


 今度は、尻尾とは反対側から何かが出た。出たと思った瞬間に引っ込んでしまったけど、尻尾の反対側から出たのだから普通に考えれば頭だろう。その頭は全体的に細長く、耳がとがっていた。


 約七分経過。


 さすがにこれ以上観察しても変化はなさそうだった。僕は、赤いもの(生き物とほぼ確定)に近づくことにした。

 一歩目。特に動きなし。

 二歩目。大きく震えた後、尻尾をしまう。

 三歩目。震えが酷くなる。

 四歩目。急に震えが止まる。

 五歩目。赤い生き物の毛が逆立つ。

 六歩目は、踏めなかった。それ以上、足を踏み出す気はなくなった。

「……なんか、怖い?」

 目の前の赤い生き物が、そう感じているように見える。それを口に出してしまったのは、そう思ったのが、僕のほうもだからかもしれない。

 毛を逆立てて丸くなっている赤い体は、熱せられたアスファルトのように周囲の空気を揺らめかせている。周囲の気温は高くないが、見ているだけで熱が伝わってくる。近づいてはいけないと、何の根拠もなく思ってしまう。

 赤い生き物の逆立っていた毛が、勢いを弱めた。

「こ、怖い?」

 赤い生き物が、そう声を出した。

「……話ができるのか?」

「で、できるよ」

 赤い生き物からつっかえながらの声が返ってくる。

「そうか」

「そ、そうだよ」

 話ができるならばとりあえず、この場所からでいいだろう。不用意に近づかなくて済む。

「名前は?」

「ふぇ、フェイルだよ」

 赤い生き物、フェイルは、自信のなさそうな声で答えた。

「フェイルは、ここで何をしている?」

 フェイルの体が震える。丸まった体が、キュッと縮こまった。

「か、隠れてる」

「なぜ?」

「わ、わからないから」

「何が?」

「こ、この場所とか、な、何でここにいるのとか、た、たくさん人間がいるのとか、い、いろいろ、わ、わからないから」

「……」

 どうやら、だいぶ困惑しているらしい。自分のいる場所も分かっていないようだ。さらに、人にも慣れていないような口ぶりだ。

「一つ聞きたいんだけど、いいか?」

「い、いいよ」

「フェイルは、精霊なのか?」

 話のできる動物はこの世界にいないから、可能性として考えてみた。

「そ、そうだよ」

「そうか」

「そ、そうだよ」

「そうなると、確定でいいのか」

 フェイルは、物の入れ替えでこの世界に来てしまった精霊。今は、そう考えていいだろう。まだ聞きたいことはあるけれど、このまま震えさせておくのは気がひける。セリアに任せるくらいしか方法は思いつかないが、それまで面倒を見るべきだろう。

「……僕の名前をまだ教えてなかったな。僕は、武野浩一」

 自己紹介したことで、フェイルの震えが止まった。丸めた体から顔を出して、こっちを見る。

「タケノ、コウイチ?」

 フェイルは、首を傾げて聞き返してきた。その瞳は、確認というよりも疑問という色が強く見える。

「そうだけど?」

 疑問で返すしかできなかった僕の答えに、フェイルはまたもや疑問で返す。

「あの英雄の、武野浩一?」

 その言葉に僕の思考は一瞬止まった。

「……どの英雄だ?」

「十年大戦の英雄だよ」

 十年大戦のことは、セリアが話していた。だから、そこまで言えば察しがつく。だが、本当に英雄として扱われているとは信じていなかった。実際に目の前で、それを言われるのは驚きだった。

「……たぶんそうなんだろう」

「おおー」

 フェイルが、丸めていた体を伸ばして驚きの声を上げた。僕を見つめるその瞳が、心なしか輝いて見える。

 体を丸めていた状態から伸ばした状態になったフェイルは、思ったよりも大きな体をしていた。普通に町中を歩くには問題になるかならないか、微妙な大きさだった。大型犬としては、飼われていてもおかしくなさそうな大きさだ。

 フェイルを表現するのにちょうど良い単語がある。

「フェイルは、狐なのか?」

「狐ってなーに?」

 疑問で返されてしまった。知っていることを前提で聞いてしまったが、世界が違うのだから知らないことも多いかもしれない。そもそもフェイルがどういう精霊なのかも分かっていないが。

「この世界の動物だ」

「ふーん」

 僕の答えにフェイルが関心を示した様子はなかった。

 さて、まずやることは、裕也に連絡を取ることからだ。こんなに早く連絡を入れることになるとは予想していなかった。少し気がひけるが、連絡しないわけにはいくまい。

 僕は、ポケットから携帯を取り出した。


 ◇


 裕也と合流した後、二人と一体で話し合いをした結果、現在は昼食をとっている。場所は、東校舎の一階だ。乾麺の持ち去りの件があった場所でもあるので一度見ておく意味もある。

 フェイルの話を聞いた限りではフェイルのスキルは、炎が関係あるそうだ。そういう訳で、火の玉の件はフェイルの犯行で間違いない。

 スキルは、精霊の持つ固有能力の総称だ。精霊に生まれた者ならば、誰もが独自のスキルを持っている。魔法と異なるのは、式が必要ないところにある。そのため、魔力の痕跡も残らず、魔法のように他の精霊や人が同じことを簡単にできるようにはならない。魔法で真似をすることは可能であるが。

 フェイルはこの世界に着いてから、わけが分からなくてさまよったらしい。その時に人の大きな声に驚いてスキルを使い、火炎をまとって逃げ出そうとした。しかし、驚きのあまり加減を間違えてしまい、上空へ跳んで東校舎の屋上に着地した。それからはずっと、屋上の隅で丸くなっていたということだ。

「こっちの件は、また別のやつの仕業ということだな」

 裕也は、塩味のラーメンを口に運んでいる。

「……うん」

 僕は、醤油味のラーメンを頼んだ。

 いろいろとトッピングやら凝ったメニューやらが並んでいたが、文化祭や女子の命令による出費で二人とも金銭的余裕がない。安上がりに済ませることを考えて注文していた。

「うん。別」

 フェイルが、返事を繰り返す。

 フェイルもここにいる。ただし、体を変化させている。

 精霊は、基本的に体の形態を変えられるものだそうだ。成長すると形態も増えるそうだが、生まれた時は皆、人の握りこぶしぐらいの大きさしかない。今は、その生まれた時の大きさに近い形態になってもらっている。丸い球体の形だ。セリアのパートナー、キュピもその形態だったのだと、今ならば分かる。

 フェイルの場合、球体の体に狐の頭と尻尾がついた姿になる。握りこぶし三つ分ぐらいの大きさだ。

 フェイルがいるのは、机の上だ。見つかると問題かもしれないが、ここのお店はちょうど大食い大会をやっていて、客の注目は皆そちらに向いている。こちらとしてはありがたい状況だが、文化祭で意外なことを考える人もいたものだ。

「おおー!」

 室内に歓声が上がった。

「参加ナンバー五番、ここで十五杯目を完食!」

 マイクを握り、派手な衣装を着た実況担当者が、声を上げた。大食い大会は、デッドヒートを繰り広げているらしい。

「精霊も飯を食う必要があるものなのか?」

 裕也が、フェイルに尋ねている。

「ないよ。魔力があれば大丈夫だから」

「じゃあ、何で麺を盗るんだ?」

「食べたいからだよ」

「フェイルは、食べたいと思わないのか?」

「うん。まだ魔力は十分にあるから」

「それじゃあ、食べたヤツは魔力が十分じゃないってことか?」

「さあ?」

 フェイルが、体ごと首を傾げた。ぬいぐるみが傾いたように見える。

「さあって、何で?」

「食べたいと思えば、魔力があっても食べるよ」

 栄養補給という意味だけでなく、味覚を楽しむという意味もあるのだろう。精霊の感覚は、本当に人と変わりないらしい。

「それじゃあ、食べた後はどうするもんなんだ?」

「魔力を調整するよ」

「調整?」

「うん。僕は火の精霊だから、火の性質の魔力が必要なんだよ。それ以外にも必要な魔力はあるけど、ほとんど力にならないから外に出すために必要な魔力を補うんだよ」

「補うってのは、どうするんだ?」

「それは、必要な性質の強い所で補うんだよ」

「魔力を食うってことか?」

「ん〜、違うかも。食うんじゃなくて補うんだよ」

「補う、ね」

「そうだよ」

 表現の問題なのだろうが、補うと言われるとサプリメントか何かだと思ってしまう。人の場合は偏った食生活をすると健康に悪いというが、精霊の場合は偏らないと健康に悪いわけだ。

「補うために特別に何かをするわけじゃないのか?」

「何もしないよ。性質の強いところにいるだけだよ」

「そりゃ楽でいいな」

「楽だよ」

 裕也の言葉にフェイルは、あっさりと同意してくれる。

 ここまで聞けば、乾麺の件は食べるためと判断しても良いだろう。そうした場合は次に調整に入るわけだが、一晩たった今となってはあまり必要のない情報かもしれない。

「一応、魔力の性質の強い所ってのも調べてみたほうがいいかも知れねぇな」

「どうやって?」

 僕や裕也には魔力の性質なんてものは、分からない。そうなればフェイルに頼むしかないわけだが。

「フェイルは、魔力の性質の強い所がわかるのか?」

「火の性質の強い所はすぐにわかるよ」

「ほかは?」

「知らない」

 自分の能力の及ばないことには大抵の者は疎いものである。

「ちなみに、ここは何の性質が強いんだ?」

 裕也が、この部屋を手に持ったお箸で示しながら聞いている。

「ここは、火が強いよ。後は、土とか、木とか」

「火は、熱だよな。土は、地面か?」

 裕也が首をひねった。

「木は、植物。……食べ物とか?」

 僕も裕也と同じように首をひねる。ここには一応野菜がある。麺も小麦が主な原料だ。

「知らない」

 フェイルの意見は、それで終わりだった。

「どっちみち、相手が分からないと探しにくいな」

 魔力の性質が分かろうが、結局探し当てられなければ意味がない。乾麺の件が精霊(仮定)ならば、その精霊(仮定)の必要とする魔力の性質が分からなければ意味がない。

「結局は、探し回るしかなさそうだね」

「しゃあねぇな」

 僕たちの今日の行動は、歩き回ることに確定した。

 裕也が、箸を置いて立ち上がった。僕も食べ終えているから裕也に続いて、静かに立った。

 フェイルには僕の上着のポケットの中に入っていてもらう。窮屈だろうが、それは我慢してもらうしかない。

「ともかく、俺はもう少し調べてみるわ」

「分かった」

 僕は、裕也にうなずいて教室を出た。そこで携帯が鳴った。

 ディスプレイの表示を見てみると、光からのメールだった。光の仕事の時間は終わったようだ。

「……どうしよう」

 今は、文化祭を楽しむ気分じゃない。今やっている事も、あまり人を巻き込むべきじゃない気がする。

 裕也もほとんど文化祭を楽しめる状況じゃなくなってしまっているから、きっと光もこの件にかかわったら楽しめなくなるだろう。

 僕は、助けを求めるために裕也に視線を向けた。

「そっちは、タケに任せた」

 裕也は、拳を突き出し、親指をビシッと立ててみせた。

「……」

 力にはなってくれないらしい。

 仕方がないので僕はフェイルを伴って、光との待ち合わせ場所に向かう。

 さて、どう説明したらいいのだろう。


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