8 白虎1
-side 白虎 -
顰め面をしながら歩いている、深紅の鎧を着た赤い髪の美女に、黒い鎧を着た白髪の老戦士が声をかける。
「姫様。スカーレット様。」
「はい?あぁ、爺ですか。」
「どうしたのです?難しい顔をして。また、王が無理難題を?」
「はい。兄上から、東夷に公使として赴くようにとの話がありましたの」
「?問題があるとは思えませぬが・・・てっきり以前のような、竜神八部大会で優勝するまで帰参は許さんとか、そんな話かと思いましたが」
「まぁ、去年やっと優勝でき、帰参できたときの・・・。あれは今回の話よりはまだ数段マシですわ。」
「なんと!」
「魔術師長の占術によると、東夷が力を回復するために召還を行ったそうですの。」
「まさか・・・勇者を」
「たぶん。王は勇者が力を付ける前に倒して、その功を元に央華国への発言力を強めるおつもりですわ。」
「いや・・、しかし・・、公使として赴いて暗殺など・・・そのような真似をして、無事に帰れるはずがございません。お断りになるべきです。」
「王命を断れる訳が無いでしょう?。兄上は、竜王である私のことがよほど邪魔なようですわ。」
「天王でございましょう。竜神八部大会で優勝されたのですから、天王を名乗るべきです。」
「馬鹿らしい!央華に逆らって2名が資格を剥奪され、1名が引退、伝説級、神級とも言われた真の竜神八部の内、3名が欠けた大会で優勝したところで、天王を名乗れるはずもないですわ。」
「それはさておき、連れて行かれる者は歴戦の者を選ばれるべきです。不肖、この私もお供いたしますぞ」
「連れは既に選ばれております。イルド・マレ、カワード。両方とも腕は確かで・・・」
「なんと、幼女食いのイルド、臆病者のカワードですと!確かに腕は良いですが、性格に難が有りすぎます!。
特に東夷のブルネットは女性の敵には冷酷で有名ではないですか、幼女食いを連れて行くなど正気の沙汰ではございません!」
「兄上が決められたのです、従わぬ訳にまいりませぬ。まぁ、兄上も馬鹿ではありません、白虎に害が及ばぬように手を打たれるでしょう。」
「それは・・・(それは、姫様を切り捨てるということではござらぬか、くっ、それでこのメンバーが選ばれたのか・・・)」
「爺、私とて竜王です、八部が二人いるとはいえ、むざむざと遅れを取るつもりはありませんの。私が帰ってくるまで、白虎をお願いいたします。」






