77 転生者あらわる1
それは、黒姫の子が産まれた後のブルネットの一言から始まった・・・
「その子は記憶持ちです。」
その場で皆が凍り付く。状況を理解できず、一人取り残されたイチローがシルヴァに聞く。
「記憶持ちってなんだ?」
「・・・そうか、イチローは知らぬか・・・。我々が死んだとき、肉体や精神体は世界の中で拡散するが、魂は異世界に移動してそこで新たな生を受ける。つまり、全ての生き物は輪廻転生を行っておるのじゃ。
肉体や精神体は元の世界で拡散しているため、普通は新たに生まれ落ちた時には記憶を失って居るのじゃ。
ところが、本当にごく稀にだが魂に精神体の一部がくっついており、昔の記憶を残したまま新しく産まれる場合があるのじゃ。これが、我々の言う「記憶持ち」、お主の世界で言う「転生者」じゃの。」
「なあ、それって問題があるのか?」
「・・・うむ。自然というのは環境に適応していることが多いのじゃ。ほとんど全ての人間に前世の記憶が無いというのは、その方が新しい世界に適応しやすいということなのじゃ。」
「だからどうした。そんなの関係ないだろ。」
「ハーピーが人間になったらどうじゃ?羽の動かし方の記憶が邪魔をして腕をまともに動かせんぞ。人魚が人間になってもじゃ、歩き方を覚えるのは難しいじゃろう。
逆も同じじゃ、人間がハーピーになっても人魚になっても、手足の動かし方を覚えているのが邪魔になってまともに飛んだり泳いだりはできん。
お主もそうであったろう。魔法の無い世界から来たお主が魔力を身につけれたのは、魔法を誰よりも良く知っておる儂が訓練をしたからじゃ。そうでなければ身につけることはできんかったじゃろう。」
「・・・でも、シルヴァが教えてくれたから身につけることが出来た。人並みで出来なければ人以上鍛えれば良いだけだろ。」
「ならば、常識はどうするのじゃ。以前の常識がこの世界での生活の邪魔をするぞ。力が全ての世界、騙すのが当たり前の世界、王が民を虐げるのが当たり前の世界、いろんな世界が存在しているのじゃぞ。」
「常識など、10年もすれば新しい常識に慣れるもんだ。
なあシルヴァ、俺は今までお前の言うとおりにこの世界の常識に従ってきた。でもこれだけは譲ることは出来ない。
この子は、この俺と黒姫との子は、俺達で立派に一人前にしてみせる。」
「・・・そこまで言われると何も言えんの。ふむ、それでは儂もこの子が無事に育つように色々と考えてみようかの。」
「旦那はん、ありがとう・・・うちは子供は絶対に見捨てないと決めてたんや。ほなけど、旦那はんがほう言ってくれてメチャメチャ嬉しいわ。」
なんかイチローが格好良くなっています・・・どうしてだ。




