71 紅音の切り札
西大島(元の世界では九州)の北部で、紅音と星宿達と共に央華軍と睨み合っている。
イチローの左右にシルヴァ、ブルネットが控え、イチローの前に紅音、彼らを取り囲むように八十八の星宿が布陣している。
既に戦の前口上は終わり、後はぶつかり合うだけである。
「我らが東夷を犯す侵略者を許すな!」
「イチローの首を挙げた者には欲しいままの恩賞を与える。かかれ!」
紅音と藍華がそれぞれ声をを挙げるとそれぞれの軍が動き出す。
「うむ、思いの外、央華の勢いが強い。これは拙いの・・・」
イチローの隣のシルヴァが呟く。
「奥の手を出すしかないですわね・・・我が手の中に虚空あり。二つに分けて右手を光、左手を闇となす。光益々強まれば闇更に深くなり、闇益々濃くなれば光更に輝く、白虎にあるはオーディン、トール、・・・フェンリル、ヨルムンガルド、・・・朱雀にあるはヴィシュヌ、シヴァ、プラフマー・・・」
紅音が前で両手を合わせ上下に広げる。上げた右手に光が下げた左手に闇が集まり、それと共に巨大な魔力が集まり出す。
「(ちぃ、あれは拙い)おい突破するぞ!全力で紅音を潰せ!魔法使い、僧侶、どんどん紅音に魔法をぶつけろ。あの魔法を潰すんだ!」
一騎当千の星宿を次々に破壊しながら藍華が紅音に迫る。
「遅いですわ「虚空陣」」
右手の光が散らばりそれぞれが神々となり、左手の闇が分裂して収縮し悪魔達となった。
「ざけんなぁ~。」
藍華は目の前に現れたベリアルを叩き切り紅音に迫ろうとするがシヴァに阻まれる。
一般兵は神と悪魔を傷一つ付けることが出来ず、一振りで何十人が吹き飛んでいる。
僧侶が自分の神に祈って陣を打ち破ろうとする。
「トール神よ我に力を「サンダーハンマー!」、馬鹿な・・・発動しない。」
トール神がハンマーを投げ僧侶を含めた何十人かを粉々に吹き飛ばす。
「トール神を攻撃するためにトール神の力を借りるとはの・・・愚かじゃの。」
僧侶達は神の力を封じられ絶望し、魔法使い達も自分の魔力との格の違いを悟ってしまい顔を青ざめさせる。
虚空陣を発動させてから数分で一万以上もの兵が吹き飛ばされ、央華軍は組織だった抵抗が難しくなってきている。
「(この戦負けたな・・・)ここは、この藍華が引き受ける。皆、全力で逃げろ!」
「二度も攻め入って無事に帰れるとでも思っていますの?」
「竜王、手前ぇさえ倒せば何とかなるじゃねぇのか?付き合ってもらうぜ!」
「勝てるとでも思っているのですの?」
「それでも・・・やるしかねぇんだ。おらぁ!」
何とか紅音までたどり着いた藍華が斬りかかるのをみて違和感を感じる。
「なぁ、シルヴァ。何か相手が弱くなってないか?」
「先程の強さは部下を率いてこそ、単独ではこんなものじゃ。紅音も物好きよのう・・・今ならばシヴァやオーディンで十分倒せるものを・・・」
「捕らえるつもりなのでしょう。」
「ブルネット、何でそんなことをする必要があるの?」
「元々、紅音と藍華は仲が良かったですから。神や悪魔では手加減が難しいですので、藍華は自分が倒すことにしたのでしょう。」
「紅音、一騎打ちしてくれねぇか?」
「よか・・」
「待て、竜王は受けるわけにはいかぬ。虚空陣を維持する必要があるのでな。更に言うと東夷にどの様な得があるのじゃ?」
「一騎打ちを受けてもらえるんなら、二度と東夷を攻めねぇ様に皇帝に・・・」
「嬉しい申し出じゃが・・・お主にその力が無いのは、お主自身が気付いておろう?それならば、東夷の復興に全力を尽くして貰う方がありがたい。」
「いいだろう!勝負に関わらず、東夷の復興に全力を尽くすぜ。」
「良いじゃろう。央華軍を追撃もせん事にしようかの。これはサービスじゃぞ。」
「乾闥婆王には感謝する。それでは、いくぜ!」
「宜しいですわ。」
紅音は光の槍と闇の装束を纏うと、一合もせずに藍華を打ち倒す。
「これでこの戦も終わりじゃの」




