68 嵐の予感
-side 央華 -
場末の酒場に二人の男が向かっている。
「しかし、こんな所に藍華殿がいるのか?東夷征伐に反対して剥奪されたとはいえ、仮にも「天王」だった人間だぞ?」
「反対しただけでなく、いろんな方面に中止するように働きかけてな、クククッ、人の欲に絶望して全てを投げ出した訳だ。」
「そんな人間が第2次東夷征伐に協力するのか?」
「クククッ、まぁ、任しておけ。」
騒がしい酒場の片隅に女が一人座っている。女のテーブルの前には幾つものジョッキが転がっている。
ボサボサの金髪は手入れをされておらず、埃だらけの顔と薄汚れた服のせいでちょっと女性には見えない。
その女に先程の二人組が声をかける。
「ここに居られましたか、藍華様。」
「うるせぇ。もう俺にかまうんじゃねぇ。」
「「天王」の藍華様を放って置くわけにはまいりません。」
「その名はもう捨てた。皆を救うことが出来ずに、なにが「天王」だ。くそっ。・・・あんまりウザい様だと叩きのめすぞ。」
「そう言わないで下さい。実は第二次東夷征伐の話を持ってきたのです。」
「馬鹿言ってんじゃねえぞ!勝てるとでも思ってんのか?チルドの話は俺も聞いているぞ。」
「流石にお耳が早い。しかし、これは勝たねばならんのです。スカーレット殿、白銀殿、黒姫殿のお話はお聞きになられましたか?」
「・・・竜王達がどうかしたのか?」
「実は、東夷に捕らえられ、召還された勇者に、その、酷いことをされているとか・・・」
「まさか・・・東夷はそれを防ぐために央華と戦をしたんじゃねえか・・いや、東夷にはブルネットがいる。お前の言うことは信じられねぇな。」
「このようなことで嘘はもうしません。証拠に、白銀殿は勇者に孕まされております。外には王妃として言い訳しておりますが、あのお三方が全員、会って数カ月の人間に惚れるとお思いですか?」
「・・・俺にゃあ関係ねぇな。右将軍でも左将軍でも勝手に行けばいい。」
「ご冗談を、右将軍でも左将軍でも勝てないことは一番ご存じでしょう?央華国の不動の中将軍が出ないことには勝負にもなりません。」
「俺は辞めた人間だ。放っておいてくれ。」
「友人達を見捨てるのですか?」
「・・・少し考えさせてくれ。」
二人は藍華に別れを告げ、央華の宮殿に帰っている。
「おい、あんな嘘を付いてどうするんだ!」
「クククッ、嘘は付いておらんだろ?王妃になったことも、孕んだことも話したぞ。酷いことをされていること、惚れていないことなどは断言しておらん。あくまでウワサだウワサ。」
「上手いこと言いやがるなぁ。」
「これで、ほぼ確実に天王は動く、兵の募集を進めるよう上に報告してくれ。」
「あぁ、1年以内には討伐を起こせるだろう。お前の方も準備を頼む。」




