7 チルド
どうしてこうなった・・・
俺は一人寂しく家事をしながら、あの一言を後悔していた。
「いつもは消費魔力を抑えて、戦闘の時だけ能力を解放するのはできないのか?」
「ぬぬ、その発想はなかったの・・・。お主の世界ではそれが普通なのか?」
「イヤイヤ、人間にそんな人間はいないが、ゲームでも漫画でも魔王が変身するのは結構有るぞ。」
「オイ、わしの作品を魔王扱いするとは良い根性じゃの。じゃが、通常の消費魔力を抑えて、必要なときだけ変身するのは良いことを教えてもらった。感謝するぞ。」
それから、シルヴァはテラー持って自分の研究室に閉じこもってしまったのである。
ブルネットは一人で政務を行う羽目になりてんてこ舞いで、俺は責任をとって家事をこなしている(もちろん、朝から晩までやっても最低限のことしかできていないが・・・)
「くそっ、いつまで籠もっているつもりだ・・・。まさか、異世界に来て引きこもりの世話をすることになるとは。」
俺は、研究室まで食事を運びながら愚痴っていた。既にシルヴァが籠もってから一週間以上である。朝と晩に食事を運び、一言声をかけてから出されている皿を下げる。
愚痴りたくもなるというものである。
「おーい、ここに飯を置いておくぞ~。そろそろ、風呂に入らないと臭うぞ~。」
「うるさいぞ。」
「おおっ。今日は返事があった。」
「くっ、くっ、くっ。毎回毎回、一言余計なことを言いおって。しかし見よ、わしの最高傑作、チルド01」
扉が開いて、シルヴァとメイド服を着た少女が出てくる。
「テラーちゃうんかい。それに、何でメイド服着とんねん。」
「うむ。改造とはいえ、発想を根本から変えたからの。わしの子供みたいなモノじゃから、チャイルドを縮めてチルドとした。メイド服を着ているのは、これからメイドの仕事をしてもらうつもりだからじゃ。」
「メイド?」
「うむ、第1形態つまり通常時は100人ぐらいしか相手に出来ないのでな。」
「おい」
「1回目の変形はスピード、2回目の変形はパワーを重視して変形する。ここら辺までは、自分で動くことが出来るのじゃ。第2形態で1000人、第3形態で1万人を相手にすることが出来る。」
「おいおい」
「第4形態で、テラーと同じ戦闘力を持つようになり、このときはわしが居るか、外部から魔力を吸収する必要があるのじゃ。」
「そんなんにメイドさせるんかい!」
「わたしはチルドです。そんなんではないです。よろしくおねがいします。」
「ううっ、ゴメンナサイ」
結局、チルドにブルネットが付きっきりで家事や常識を教えている間、俺が家事を一手に引き受けることになるのであった。(ちなみに、シルヴァは政務に逃げた)