6 テラー
「私が洗い物をしておくから、イチローは倉庫の掃除、シルヴァは政務を初めておいてね」
ブルネットは家事を完璧にこなしており、俺にいろいろと教えてくれるが、シルヴァは全然ダメで、まともな食事を食べたいと思ったら絶対に任せてはいけない。(ちなみに、掃除は全くしない)
このため最近では、シルヴァは朝から政務、ブルネットは家事が一段落付いた午後から政務、俺は雑用と役割分担ができあがっていた。
ある日、俺はガラクタが適当に詰め込まれた倉庫の整理をしていた。
「なんだこりゃ、めちゃめちゃ精巧な女の子の人形やな。えらい丁寧にしまい込まれているし・・・」
「それは、テラ-00。央華軍を撃退したワシの最高傑作の兵器であり、龍脈をグチャグチャに乱した元凶でもある。」
「おいおい、こんなところでサボってると後でブルネットに怒られるぞ」
「なに、お主が掃除する倉庫に、これが置いてあるのを思い出してな。壊されるのならまだしも、起こされては大変が起こるでな。あわてて飛んできたのじゃ」
「起こされるよりも、壊される方が良いんかい・・・」
「ふむ。お主にはこれの説明をして置いた方が良さそうじゃの。」
「テラーの特徴はの、動かすのに膨大な魔力を必要とし、その魔力を周囲から吸収するということじゃ。」
「膨大な魔力が必要という時点で、既に欠陥品のような気が・・・」
「何を言っておる。伝説級の攻撃魔法も吸収し、伝説の武具ですら、当たる前に魔力を吸収されただのガラクタになってしまう。完全な魔法防御じゃ。もちろん、自分は魔法で防御力を上昇させておるので、ただの武具では貫くことも出来ず、衝撃も跳ね返す。」
「両腕は伝説の武具級の攻撃力を持ち、もちろん、伝説級の攻撃魔法も使用することが出来る。さらに、恐ろしいのが生物の魔力も吸収するため、英雄クラスでないと周囲にいるだけで死んでしまうのじゃ。」
「いやそれもう、魔王ですから・・・」
「央華軍、十数万をたった一体で殺し尽くし、さらに暴走してこの地の魔力を吸収し始めたのでな、わしが止めざるをえなんだ・・・」
「ドウヤッテトメタノデスカ」
「禁呪を使用してな、元々伝説級のわしの魔力を数百倍にして、その魔力を喰わせて飽和状態になったところを、ブルネットの魔法で休止状態にさせたのじゃ。
その時は既に、この国の龍脈はズタズタになってしまっておった。」
「わしが側に居て魔力を供給してやれば、この地に影響を及ぼすこともないがの、ずっと側について居るわけにもイカン。さりとて、壊すのも忍びないしの・・・。
良い方法が有れば、いつか起こしてやりたいとは思っておる。」