5 居候
「なにかお手伝いできることはありますか?」
ずっと「居候」を続けているのもどうかと思い、俺は手伝いを申し出ることにした。
「とんでもない、こちらの不手際のせいでご迷惑をお掛けしているのに・・・」
「というか、手伝えることがないのじゃが。」
おずおずと断るブルネットを横目にシルヴァが冷たく斬る。
「いやいやいや、何か手伝えること有るでしょ」
「ふむ。それならば、何が出来るか試してみよう。」
「しかし、シルヴァ・・・」
「ブルネット、一度しっかり判ってもらっておいた方が良い。付いてくるが良い。」
「ここで政務を行う。」
館に一室に案内し、シルヴァは説明した。
「龍脈が乱れてから税金を取る状況ではないのでな。訴えを裁くことと魔物から町村を守ることだけしか行っておらぬ。よほどの魔物が出てこぬ限り町村は各自で守れるしの、訴えも町村内でほぼ治まる。
わしらが行うのは、強い魔物の駆逐と町村同士の争いを裁くことだけじゃ。ブルネットとわしの二人の内、一人が半日ほど行えば済む。もうすぐ裁きが始まるので見ていくが良い。」
別室でシルヴァが裁くのをコソッと見ていましたが・・・はい?話が全然分かりません。
「ブルネット・・・話が全然理解できないのですけど・・・」
「ああ、それは私とシルヴァがイチロー様と日本語で話をしているからですわ。ここでの言葉は日本語と全然異なります。」
「簡単に覚えられるとは思えないんですけど・・・」
「そのための、魔法がありますから。」
「それって、俺にも使ってもらえるの?」
「使っても良いのですが・・・魔法をかけることにより、元の世界に帰りにくくなる可能性があるためお勧めしません。
もちろん、この世界に留まるおつもりならば、いつでも魔法で言葉を覚えられるようにいたします。」
「理解できない言葉をずっと聞いていてもなぁ・・・。ブルネット、別の仕事はないか?
そういや、この館にはシルヴァとブルネット以外の人がいるのを見たことがないけど?」
「今、この国は皆、食べるのに精一杯です。そんな中で私たちが贅沢するわけにはまいりません。自分で出来ることは自分でする。それが当たり前です。」
その後、薪割り、水くみ、料理、洗濯と試してみたが、俺がまともに出来たのは、皿洗いと掃除だけだった・・・