44 特訓(6日目)2
「はぁはぁ」
森に駆け込んでからどれだけ逃げ回っただろう。
後ろから追ってくる気配が感じられなくなって、イチローは大木の下にへたり込んでしまった。
「竜神八部から逃げられるなんて俺も強くなったよな~。マジで魔力なんか必要ないかもしれん。」
「ウォーン」
その時、遠くで犬の遠吠えのような声が聞こえる。
「えっ、そういや、村や町の外では魔物が出るって」
「ウォーン」
「けっ、けっこう近いぞ。」
ガサガサガサ
茂みが揺れて、黒い野犬が5匹ほど出てきたイチローを取り囲む。
「ひぃ、来るな。」
飛びかかってきた犬に向かって手を振り回すと、一匹の犬が手に噛みつきイチローの体勢を崩し、もう一匹が逃げられないように足に喰いつく。
「ぐっ」
超回復によって痛みに慣れているイチローは、痛いというよりも「熱い!」と痛みによって逆に冷静になった。
そして、その冷静さでこのままでは助からないと判断する。
「はい、そこまでや~」
急に現れた黒姫がイチローに噛みついていた2匹の首を刎ねた。
「失せなさい。」
紅音が現れたと思ったら、残りの3匹がバラバラになる。
「我が君、大丈夫か「回復」」
白銀が手を翳すとイチローの手と足が見る見ると回復した。
「うぅ、皆、ありがとう・・・シルヴィア、逃げてすまなかった。帰ったらあの薬を飲ませてもらう。」
「あぁ、あれはダミーじゃから、飲まんでもよい。しかし、これでも創れんとは難しいの」
「えぇ!・・・もしかして、これって全て芝居?危機に陥ったら魔力が出来るかもってこと?」
「芝居というわけではない。お主を魔物に襲われる状況に持っていっただけじゃ。そもそも、お主がこの3人から逃げられるはずが無かろう。」
「しっシルヴァ様、それは秘密では有りませんでしたの」
「へぇ~、3人とも協力していたんだ。」
「いや、我が君、これには深い訳が、」
「そうや、旦那はんの魔力のために、」
「3人とも、覚悟しておいてね」
その晩の3人へのお仕置きは結構ハードなものであったことは述べておきたい。




