3 説明1
俺が落ち着くまで待ってくれた後、少女は説明を続けた。
「この世界と、お主の世界で一番異なるのは「魔力」が有ることじゃ。」
「えーと、マジ?」
「なかなか信じれんかもしれんが・・・「光」」
少女の指が白く光り出す。
「これが、魔力を使った「魔法」というものじゃ。
そしてな、魔力は大地を巡っており、この巡っている流れを「龍脈」と言っておる。この龍脈のおかげで作物が非常に良く育ってのじゃが、去年の戦争でグチャグチャに乱れてしまったのじゃ。」
「で、作物が育たなくなったと」
「そのとおりじゃ。あと数年で飢え死にするしかないと覚悟しておったがの、ブルネットが昔から在る異世界を覗き込む魔法を改良しての、異世界から召還する魔法を開発したのじゃ。」
「で、異世界から作物を召還しようと」
「うむ。魔力に依存しておらず、荒れ地でも育ちやすいものを探してな。勇者を召還してなんとかしてもらうという話も出たが、誘拐よりも窃盗の方がまだ良いじゃろと思ってな。盗ったあと、餓死者が出てもいかんので、豊かな国から召還させてもらった。」
「んで、俺が巻き込まれたと」
「本当に申し訳ないと思っておる。100日後に魔力が溜まったら、送り返すつもりだったのじゃが・・・。お主が名乗ってしまったのでな。」
「ナノッタラ、イケナカッタノデスカ?」
「お主の世界の神話や物語にも有るじゃろ。食べたり飲んだり、話をしたり、名前を名乗る、異性と仲良くなる、こうなると異世界から帰るのが非常に難しくなる。
特にお主は偽名を名乗ったのでな、元の世界から切り離されて、この世界に「サトウイチロー」として存在してしまったのじゃ。」
「いやいやいや、飲み食い無しで100日間なんて無理ですから」
「石になっておってもらおうと思っておった」
「オイ」
「今も同じじゃ。送り返すのは、難しくはあるが不可能ではない。石になって待ってもらっている間に、新しい魔法を開発して送り返したいと思っておる。ただ・・・」
「ただ?」
「100年ぐらいはかかると思われる。」
「・・・別の方法でお願いします。」