快楽殺人者Ⅲ
◇◇◇◇
「起きて、起きてよ裕弥」
微睡んだ瞳を開けると一人の幼い少女がエプロン姿でモーニングコールをしていた。
「…………なんだ?エプロン?」
「うん、今日は料理を作ったんだよ」
確かに少し離れた机の上に丼ものらしい皿がある
「早く早く、冷めちゃうよ」
裕弥は死にそうな程眠かった。
それは目の前の襲撃犯と昨夜ゲーセンで金があるだけゲームをやっていいたからだ…
それを思い出し不愉快になる
「あのな…俺が眠いのは誰のおかげだよ」
「だって…ゲーセンって持ちがね全て叩いてやるのが普通だって友達が…」
どうやらデマを本気にしてしまったようだ…
雪は真面目な性格だからこの手のことは今に始まったことじゃないが…
「うっ………なんじゃこれ」
「どう?…いと引いて召し上がれ」
「召し上がれじゃね~!いと引く前にお前にドン引きだわ!」
雪が料理と称して俺に作ったのは納豆丼だった
しかも料理以前に盛りの域から脱していない…
見かけ上のランクアップだ…
「で、でも、おいしいよ」
「あ~はいはい」
呆れながら目の前の納豆丼を食べる覚悟を決めた
□□□□
少し時間がたち俺は納豆丼の撃破に成功した
雪はエプロン姿のままキッチンで食器洗いと片付けを嬉しそうに行っている
「雪…手伝おうか?」
「大丈夫、裕弥はテレビでも見てて」
時刻は午前7時前
寮と学校はすぐ隣なので十分な余裕がある。
ちなみに学校開始は午前8時30分だ
「そ、そうか……」
裕弥はテレビのスイッチを入れた
テレビでは毎朝のようにニュースが流れている
《ニュースをお伝えします。
昨日の夕方ごろ国立生物研究所で事故があり研究員の男性:西沢和也(24)が死亡しました。関係者の話では実験生物用の薬品を誤って自身に投与したということです。》
国立生物研究所は日本でも有数の最先端研究所である。
当然、魔術研究機関共同体の中枢機関と言えるだろう
「…………研究所か…」
「魔術関係じゃないことは確かだと思うよ」
「そうだな……」
魔法戦争に関わるニュースは国が報道規制をしている。
今回の死亡事故とは無関係だろう
ニュースでは亡くなった西沢さんの研究チームがインタビューに答えている。
一人は赤い髪をした千春という女性、もう一人は研究主任の黒髪の眼鏡をかけた赤城という男だ
《西沢さんの事故はどう思ってらっしゃいますか》
《とても残念です…西沢は私たちの研究仲間でしたので…》
そう答えると赤毛の女性はハンカチを取り出しカメラから視線をそらす
「仲間か……」
「あの人たちもカワイそうだね…」
「ああ……そうかもな」
その後は無言でテレビをみていた
自分が仲間を失ったとき
自分が死んだとき仲間は
泣いてくれるのだろうか
この人たちのように嘆いてくれるのか?
素朴な疑問が裕弥の中に生まれた




