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強襲2日前 夜

□□□□


「これ…どうするつもりだ?」


裕弥が目の前で眠っているカズマを指差した。


「そうね…まず服を着せて」


「って俺がやんのかよ!」


「当然…まさか貴様は女子にやらせる気だったのか…ドン引きだな」


「そうだよ、裕弥がやる以外ないよ」


裕弥はため息を吐き出すと落ちていた体操服を拾ってカズマに近づき服を着させ始める。

なんか男の着がえを手伝うのは変な感じだ…2人の女子に見られているので余計に恥ずかしい。


「雪、悪いけど電気つけてくれるか」


「分かった」


夕日も沈み美術室はかなり暗い、時刻は7時まえといった所だろう。

裕弥の指示を受け、雪が教卓の隣にある電気スイッチまで歩いていく。

雛はただ様子をうかがっているようだ。


その刹那ーーーー


「教会の人形からは脱したようだね」



「「「なっ…!?」」」


いきなり美術室の中央から声がした…そこには一人の少年が座っていた。

裕弥と同じ制服を着た茶色の髪の少年で身長も少し高い、目は鮮やかな黄色をしている。

しかし、裕弥たちは彼を知っていた。


「何しにきた…テツヤ」


口を開いたのはカズマの近くにいる裕弥だった。


「別に…そいつを殺そうと思ってね」


そう言うとテツヤはカズマに視線を移した。

とっさに裕弥と雪が銃を取り出してテツヤに銃口を向ける。


「教会に命令されたのか?」


焦りを浮かべ裕弥が尋ねる。


「いや、僕も奴らの人形兵器じゃない」


「じゃ~なんで!?」


目の前に座っている少年、矢島テツヤは4人目の使者だ。チーム戦にはほとんど参加せずに自分の暇つぶしで動くことが多い。


「暇つぶしだよ♪それとも、相手してくれんの?」


「ああ、静かに寝てろ!」


裕弥はテツヤに向かって銃の引き金を引いた、しかし、銃弾がテツヤの目の前にきた所で止まった。


「なっ!?」


銃弾は静止したままテツヤの目の前に浮いている。よく見ると弾丸を挟むように赤色の魔法陣が浮かんでいる。テツヤは弾丸を魔法陣でサンドすることで防いだのだ。

これには、雪や雛も驚いているようだ。


「そんなオモチャじゃ僕は殺せない、裕弥も魔法を使わないと勝負にも成らないよ」


「悪いが使うつもりはない」


裕弥の言葉にテツヤがハハっと笑う


「使わない…じゃなくて使えないんでしょ?」


「……………」


裕弥は言葉に詰まる。

確かに英雄のクローンである裕弥たちは魔道具に頼らずに魔術を行使できる…しかし、リスクも伴う。クローンと言っても本人ではない、当然なことに器が違うのだ。

大きな魔術ほど身にかかる負担は大きい、これが裕弥が銃を使っている最大の理由だ。


「お前もそれは同じだろうが…防御魔法をしたのに攻撃魔法をやってない、お前は防御と攻撃のミックス魔術が十八番、だがやらなかった」


テツヤの口もとがピクリと動いた、そして両手を上げる。


「さすが、なかなかの推理だな…今日はもう十分に暇がつぶせたよ」


そう言い終わるとテツヤは魔法陣を消し、それに支えられていた弾丸が床に落ちた。


「そのレベルなら、これから一緒に仕事ができそうだ。じゃ~あ」


その後、テツヤは使者全員を見渡し微笑んだ…そして部屋を後にした。

妙な静寂が支配する。


「気を取り直して帰るわよ」


そんな均衡を破ったのは雛だった。


「雛ちゃん、もう暗いし寮に泊まっていかない?」


「えっ!?…でも、いいかもしれないわ」


「やったぁ!」


雪が腕を大きく回して喜んでいる。料理は私に任せて、と殺人予告めいたことを言っている。

ここで裕弥の頭に一つの疑問が浮かんだ。


「神崎はどうするんだ?俺はコイツの寮の部屋は知らないぞ」


すると雛が楽しそうに裕弥を指差してくる。

もう嫌な予感がする


「意識が戻るまで、アンタの寮部屋に泊めなさい」


「裕弥もお泊まり会だね」


「何が楽しくて一度殺そうとした相手とお泊まり会せにゃあならんのだ!」


場違いなセリフをはく雪に裕弥が怒りの声を上げる。


「大丈夫、記憶は消してあるし…新たに記憶を上書きしたら…そうね「俺らはヤンキーでファンキーな間柄のベストフレンドだった」みたいな」


「余計にややこしくなるわ!!何だよヤンキーでファンキーって」


色々話し合った後、カズマを含めた4人は美術室をあとにした。




◆◆◆◆


夜の闇が世界を支配し始めた頃、白銀の髪を風に揺らす少年がいた…漆黒の服に左右が不対照のオッドアイの綺麗な顔立ちの少年で少しかわいい系の高校生男子といったところだ。右目は碧眼で左目は鮮やかな黄色をしている。その視線の先には一つの大きなビルが立っていた。


「懐かしいじゃん。やっぱ、この街が一番歪んでる…」


《魔術教会付属魔法保管タワービル》その建物にはそう書かれていた。

魔術教会が回収した魔法を保管するために作った施設の一つだ。

中には魔術警備部隊や空間を埋め尽くすほどのセキュリティーが張り巡らされている。


「そろそろ始めようかな」


するといきなり少年の身体が液状化し地面に流れ出す。彼は自らの肉体を液体金属に変化させてビルの内部へと侵入していく、金属にステルス機能があるのかセンサーの類に感知されずに保管室のあるビルの内部に到着し、液体金属から元のかわいらしい少年へと形を変えた。


「じゃ~早速いただいちゃうかな」


突然、ブー、ブーという大音量の警報音がビルに響き渡り、少年を取り囲むように灰色の鎧に身を包んだ魔術警備部隊の6人がやってくる。


「へ~なかなか優秀じゃん…」


少年が苦笑する、そして、鎧兵のリーダーらしき男が前に出る。顔は鎧に覆われて見えないが一つ一つの動作の完成度をみる限りベテランだ。


「君はここがどこだか分かっているのかね…ここまで侵入してきた所を察するに魔術師だろうが、命の保証はできんぞ」


男はそう言って持っているサブマシンガンを向け、他の鎧兵も続くようにして少年に銃口を向ける。


「って!!!」


そして男のかけ声と共に銃声が響き渡り、少年に無数の銃弾が襲いかかる。


「攻撃がぬるいじゃん」


しかし、少年の手前で銃弾は液体に変化し宙に浮いた。


「なっ!?そ、そうか貴様は錬金術師か?」


「ご名答、しかし気付くのがちと遅かったね」


少年の前に浮かぶ銃弾の液体が生き物のように波打ち始め、ボウガンのような形状に変化する。

鎧兵は青ざめた表情でそれを眺めていた。


「ちょうど6発あるから安心して死んでね」


「や、やめろぉぉぉぉぉ!!!」


「バイビ~おっさん…」


そして紫の光と共にボウガンから一つの金属棒が発射され、警備部隊の前で6本に分裂し、鎧兵全員の心臓を貫通した、しかし、彼らは痛がる気配はない。液体棒が貫通し痛みを感じる前に彼らの全身を金属に変えたからだ。


「さて…他の部隊がくる前に例の物を探さなくちゃ…」


少年は何かを探り始めた。


夜の闇は深まっていく…


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