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強襲2日前 夕方

□□□□


顔を上げると生徒たちが片付けをしている。雪もコートをモップ掛けしているのが遠目で確認できる。


テニスコート内は空から振り付ける夕日を受けて茜色に輝いていた。


「ちょっと!!夜兎神くんも手伝ってくれです…優勝したからといってウチの眼鏡のフレームが歪むまでは働いてもらうですよ」


神秘的な景色に見入っていた裕弥にホウキを持った秋山がよく分からない事を口にして近づいてきた。


「別に…サボっちまっただけだ、優勝して調子にのってる訳じゃね~よ」


「じゃ~早く肉体労働に身を捧げてくるがいい」


「何か他の言い方ないのかよ!たかが球技大会の後片付けだぞ…」


俺は文句を言いつつも秋山からホウキを受け取り、辺りのゴミを集め始めた。


先ほどまで行われていた球技大会は俺と雪の優勝という形で幕を閉じた。

最終試合はテニス部のエースが相手で接戦だった…まあ、最後は雪がサービスエースをやらかした訳だが…


「じゃ、ちゃんと綺麗に掃除してくれよ、私はバイトが入ってるから」


「ちょっ…!?お前も労働やってけよー!」


裕弥は叫んだが、秋山は小悪魔のような笑みを返し、校庭の先生まで走っていった。

まったく、アイツに一本取られた気分だ…

事情を説明し終えた秋山はこちらに手を振って、校庭の横の自転車小屋に姿を消した。


そして、入れ替わるかのように雪が近づいてくる、モップ掛けを終えたせいか息が上がっている


「やったね~優勝だよ、さっそく雛ちゃんに報告しないと…あっ!あっちはどうだったんだろう…」


「落ち着け、アイツなら負けねーだろ…ペアも神崎だろ」


「そっか、そうだよね~うん」


神崎か…アイツとはあまり話した事がないな、けど雛が負ける訳ない。

俺はゴミをチリトリに集め、近くに設置されていた「燃えるゴミ」と書かれた箱に華麗に捨てさる、ひさびさに運動したせいか体が軽い。


「雛の所…行きたいんだろ、あっちも片付けて終わり始めてる頃だろうし…」


「さすが裕弥、分かってるじゃん」


その後、俺たちは第一体育館の方に歩き始めた。

夕日の赤が強くなり校庭一面が別世界に変わるー



◇◇◇◇


「雛さん…片付け終わったら美術室にきてくれないかな…」


「別に問題ないけど…どうして?」


第一体育館の横にある大廊下ではカズマと雛の姿があった。2人は片手に段ボールを持っている、中には使えなくなったシャトルが大量に入っている。

廊下に他の生徒の姿はなく、離れた館内から男女の声が響いてくるだけだ。


「そ、それは、雛さんに見てもらいたい物があるんだ…」


「へ~あまり時間は取れないけど…それでもいい?」


「ああ、もちろんだよ」


雛の言葉にカズマが笑みを浮かべる、雛は何がそんなに嬉しいのか分からないという表情だ…

雛とカズマペアは先ほど終了したバドミントンの優勝ペアだ。雛の圧倒的な身体能力とスポーツ万能なカズマは決勝で相手にパーフェクトゲームを達成した。


2人は廊下の突き当たりにある体育教官室に入っていく、室内は窓から入ってくる夕日の輝きで赤く染まっている。

先生たちの姿はなく、2人は段ボールを入り口近くに下ろし、部屋を出る


「やっぱり今から行こう、時間は取らないからさ」


「あっ、ええ…急ぎましょ」


カズマの急なスケジュール変更に戸惑いながらも雛はすぐ近くにある生徒階段を登り、3階にある美術室を目指すことにした。

雛の前を行くカズマは凶悪な表情で彼女に聞こえないように静かに笑い始める。


夕日で赤く色付く階段を上がりながら…

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