第99話:甘い未来、蜂蜜の裏に
「これ、美味しいな。」
黄金色の艶やかな菓子を齧りながら、バレルは弟子たちと議員たちとの会食を楽しんでいた。
場所は首都郊外にある高台の庁舎庭園。
春の花が咲き乱れ、微風がティーカップを鳴らしていた。
議題は今後の政策。
教育の無償化第2段、技術投資と民間との連携、環境整備におけるドライアドの活用、 娯楽と生活のバランス、魔界全土での労働支援拡充。
「いやあ、うちの地方じゃな、浮遊果実の収穫が追いつかんのじゃ。」
「流通の魔導管が詰まりまして……一部住居に蜜が逆流する事態に。」
「それはそれで甘い生活ですね。」
和やかに笑いが起きる中、いつものごとく刺客が現れた。
──黒衣の影が舞い降り、
「総理大臣、ここで……。」
「はいはい、またね。」
銃尾の音が鳴った瞬間、刺客は文字通り“蜂の巣”になっていた。
菓子の甘い香りと銃尾の轟音が、妙に調和している。 慣れているのか、誰一人として取り乱す者はいなかった。
「せめてデザートの後に来てほしいものだ。」
マスコミはこの様子を即日報道。
『総理、黄金菓子と蜂の巣撃退!』
『甘味と政治の蜜なる関係』
『菓子特集:総理愛用、黄金の焼き菓子とは?』
バレルはそんな見出しを眺めながら、静かに紅茶を一口。 弟子の一人が新しい議案を差し出し、 議員のひとりが笑いながらテーブルを回す。
「平和だなあ……」
銃尾は、皿に落ちた砂糖を舐めるような音を立てた。
その音さえも、春の午後には心地よかった。




