第9話:答えを語るということ
婚姻規制緩和の議題が正式に審議入りすると、議場は連日騒然となった。
「混血との婚姻は家門の汚れだ!」
「そもそも愛など“契約”の前に無意味だ!」
純血派の声は、時代の流れに抗うように強まっていた。
一方、改革派ですら慎重論が大勢を占めていた。
「婚姻は個人の選択に委ねるべきだが、混乱を避けるためにも、法による枠組みは維持したい。」
バレルは静かに立ち上がった。
「私は、この法案には“反対”もしなければ、“賛成”もしません。」
ざわめく議場。
「婚姻とは、あくまで個人の意思の問題。法で“促進”しても、心までは動かせない。それに、純血主義を望む者は、勝手に純血でいればよろしい。混血を避けたい者を無理に引き入れる必要もない。」
一部の議員が目を見開き、ある者は冷笑した。
「ただし、覚えておいていただきたい。」
尾がふわりと揺れ、その先端がゆっくりと銃へと変化する。
「混血の中にも、私のような者がいるということを。それだけで、血の価値とは何かを問い直すには充分でしょう。」
議場はしん……と静まりかえった。
「強制はしません。ただ、選択肢は開きます。その先を選ぶのは、“個人”です。」
その一言で、議題の流れは変わった。
結果として法案は見送りとなったが、多くの民衆が「選べるようになった」ことに価値を見出し、町では婚姻に対する意識が徐々に変わっていった。
「正論だな……。」
「あいつは、やはりただ者じゃない。」
議場の外でも、また一つ風が吹いた。




