第85話:戦場は、言葉と茶の香りと
「さて、たまには“言葉の銃尾”も悪くないですね。」
年に一度の魔王会議。
各国の魔王や代表が集まり、世界の未来を話し合う場。
そこに、総理大臣バレルの席も当然のように用意されていた。
【今回の議題】
・外交連携の強化と技術共有枠組みの整備
・多国間通商協定案の承認是非
・長寿種・短命種間の契約法整備
・文化的表現における差別表現のガイドライン策定
「まぁまぁ、固い話は後にして、まず一杯どうです?」
ミルクティーをかき回しながら、バレルは議場の空気を和らげる。 が、議論が始まれば当然、熱を帯びる。
「我が国の技術を簡単に渡すのは危険だ!」「だからこそ、枠組みで“守る”必要があるんです。」
「通商は文化の侵略を招く。」「逆に、文化が混ざることで“誤解”が減るんですよ。」
一進一退。 罵声までは飛ばないが、剣呑な空気が続く。
だが、その真ん中でバレルは楽しそうに笑っていた。
「このくらいの“火花”なら、言葉で燃やしましょう。」
彼の手元のミルクティーは、すっかり冷めていた。 でもその分、議場はよく温まっていた。
「さて、次の話題は……『余裕』ってやつについて、語りませんか?」
銃尾は使われることなく、椅子の背に寄りかかっていた。
今日の戦場は、議論と微笑みで溢れていた。




