第84話:芽吹きの季節
「やっと、吹いてきましたね。」
バレルが地図を見つめながらつぶやいた。
【近隣諸国の動き】
・第七魔王国、老魔王が退位し、民選による新魔王制度を導入
・第四層領邦、評議制から議会制民主主義への移行を決定
・連盟構成国の一部で福祉政策と教育制度の模倣・実装が始まる
「直接手を出したわけじゃありません。 でも、撒いた種が、あっちこっちで芽を出しはじめたんです。」
新魔王に選ばれたのは、かつてバレルの留学制度で学んだ者。
彼の施政方針には“多様性と討論の尊重”が掲げられた。
「……影響を与えたつもりはなかったんですけどね。」
新たな魔王たちは改革の狼煙を上げ、 旧体制の一部は揺らぎ始めていた。 だが、すべてが順調というわけではない。
「無理に真似て崩れた国も、正直あります。 でも、それでも“何もしないよりいい”って、俺は思います。」
芽が出ることに意味がある。 根を張り、葉を広げ、やがて実を結ぶ。
それを信じてきたからこそ、いま、魔界に風が吹く。
「ここからは、きっと“風景”が変わっていくんですよ。」
銃尾は地図の上にそっと置かれた。 もう、撃つ必要はない。
育てた力が、魔界の大地を彩り始めていた。




