第79話:戦から技術へ、そして民へ
「そろそろ“回収”しても、いい頃合いですね。」
かつて軍事研究に投資された莫大な資金。
それらが今、形を変えて“民間”へ流れ出す時が来た。
バレルは軍との合同記者会見で、新制度を発表する。
【軍技術民間転用プログラム】
・通信・情報処理技術の一般公開(魔界初の“魔導演算端末”開発)
・軍用素材の民間耐災建築への応用
・高速輸送網の設計技術を物流産業へ
・魔導ドローン技術の農業・建築・医療分野への導入
・端末教育の開始と市民への段階的配布
「軍が最も先を行っているのは、どこの世界でも同じです。 でも、それを“独占”しないのが、この国のやり方です。」
魔界に、初めて“パーソナル魔導端末”が配られ始めた。
街中では、魔導ドローンによる空中配送がテスト稼働を始め、 農地では自動収穫、建設現場では高所作業補助、 山間部では医療物資の緊急搬送が実用化されつつある。
「手が届かないところに、届くようになる。」
情報が広がり、教育が加速し、仕事の選択肢が増えた。
端末を使って新たな技能を学ぶ若者たち、 ドローンを使って物流を再編する起業家たち、 そして何より――それらの恩恵を受ける市民たち。
「兵器が守った平和を、今度は情報と技術が守る。」
かつて“戦うため”に作られた技術が、 今や“生きるため”に使われている。
バレルは遠く、ドローンが配達に向かう空を見上げた。
「ちゃんと回収できましたね、税金。」
銃尾の引き金も、今日ばかりは少しだけ、指を休めていた。




