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第68話:ぎっくり腰から始まる労働革命
「……うごけぬ……。」
政庁の一室。
バレルの師匠――魔権派の老政治家シェイランが、ぎっくり腰で倒れていた。
「師匠、大丈夫ですか!?」
「あいたた……急に腰に雷が……。」
騒ぎの中、ふとバレルが尋ねた。
「……これ、労災なんですか?」
沈黙が落ちる。
誰も、明確な答えを持っていなかった。
「労災って、そもそもどうなってるんだろう……?」
調べてみれば、制度は古く、不備だらけ。
特に高齢者・非戦闘職・自営業者には適用が曖昧。
「というわけで、整えます!」
【新・魔界労災保険制度】
・すべての就労形態に対応した包括的労災適用
・通勤、在宅、家庭内業務含む事故補償
・疾病由来の長期休職支援金と治療助成
・高齢労働者・技能指導者向けの特別補償枠
「保険の形も整備して、民間も使えるようにしよう。」
魔界初、選択式の“魔界保険連携システム”も導入された。
「師匠、これで安心して腰を痛めてください。」
「お前な……。」
治療ベッドの上で、シェイランは苦笑い。
バレルは答える。
「誰かが動けなくなる前に、制度が動いてるのが理想なんです。」
今日もひとつ、魔界は“痛みに優しい国”に近づいた。




