第64話:幽霊省庁占拠事件(仮)
ある日、政庁に異変が起きた。
「寒っ……なんか、ゾクッと……。」
「書類が……空中を舞って……?」
悲鳴とともに、政庁内が白い霧に包まれる。
――そして、バレルが攫われた。
「おい! 誰か説明して!? 銃効かないの!? マジで!?」
省庁の最上階で、幽霊たちに囲まれながらバレルは困惑していた。
「お前ら、成仏して? 今すぐ。な?」
「断る。我々は、“要求”がある。」
重々しい口調。
だが次に口を開いた幽霊のひとりは、
「年金ほしい」「投票権ほしい」「あの世でも配信見たい」「あの世にも図書館を」
……意外と俗っぽい。
「なんか……お前ら思ってたより、全然陽気じゃん。」
「我々、昔から未練より娯楽派です。」
バレルは肩をすくめ、幽霊たちが差し出した氷より冷たい紅茶をすすった。
「……味覚ないけど、気持ちは受け取っとくよ。」
その後、省庁では「魂族」を魔界種族の一つとして認定する議論が始まった。
バレルは、幽霊が持ってきた提案書にサインを入れる。
「はい。ゴーストの未来も、明るいといいですね。」
こうして、“幽霊たちの省庁占拠事件”は、わりと平和的に解決された。
バレルは帰り道、
「結局、俺が一番怖かったの、“紅茶がぬるかったこと”だよ……。」
と、ぽつり。




