63/100
第63話:言葉も暴力、心も守る
「今日は真面目な話です。」
バレルの一言で、政庁の空気がピリリと引き締まる。
「セクシャルハラスメント、モラルハラスメント――全部“暴力”です。」
魔界では長らく、“強き者が支配する”という文化の名残で、 心への暴力が軽視されてきた。
「でも、言葉や態度で誰かの尊厳を踏みにじるのは、実際に殴るより深い傷を残すこともあります。」
バレルは“対人ハラスメント対策法案”を提示。
・教育機関・職場での啓発義務
・内部通報制度と匿名申請ルート
・調査委員会の設置と加害者への罰則強化
・被害者の保護とカウンセリング制度
「え? やったやつは蜂の巣の刑? ……それは冗談ですが。」
「心を壊された人を放っておくなんて、政治の怠慢です。」
一部保守派からは“行き過ぎだ”との声もあったが、 各界からは賛同の声が相次いだ。
「私、初めてちゃんと謝ってもらえたんです。」
「もう、“それくらい我慢しろ”って言われないんだ。」
バレルは静かに語った。
「誰かを守るって、戦うだけじゃなく、寄り添うことでもある。」
今日も銃尾は撃たなかった。
けれど、その言葉は確かに、誰かの心に届いていた。




