第59話:退職金? いい響きですね
「そういえば……退職金制度って、どうなってたっけ?」
書類をめくる手を止め、ふと呟いたバレル。
その一言が、政庁内に静かな嵐を呼んだ。
「そもそも制度自体が旧魔界の名残で、曖昧なまま運用されてます。」
「一部族には存在しないし、別の一族は“死んだら終了”の扱いです。」
「え、それって魔王様方も?」
「……も、もしかしたら……。」
その夜、サタン魔王から直々に文が届いた。
『バレル、お前それ本気か?退職金もらえんのか!?』
なんだか、魔界全体がざわつき始めた。
――こうして、“魔界退職報酬制度見直し会議”が発足。
議題は多岐にわたった。
「死後の補償はどうするか。」
「役職による差はどこまで許容するか。」
「早期退職と功労加算のバランス。」
バレルは言う。
「終わり方を整えることで、“働く”って行為自体が大事になると思うんです。」
結果、勤続年数・功績・危険度・貢献度に基づく退職金制度の見直しが可決。
魔王も含む全役職者に適用され、制度周知と透明な計算式も公表された。
「わーい! 俺、これで余生は温泉巡りだな!」とサタン魔王。
「総理、あなたのおかげで俺たちの未来がちょっと明るくなったよ。」
「俺の未来、まだ終わってないですけどね!?!?」
尾を巻く日は、やっぱり遠い。




