第56話:お小遣いで経済回すんです
「次の施策は、“ばらまき”です。」
そう聞いて、官僚たちの顔がこわばった。
「まさか、総理……インフレ誘発を……?」
「違います。これは“ちょっとしたお小遣い”です。」
バレルが始めたのは、“個人振興応援金制度”。
全国民に対し、小額の支給金を一律で配布。
ただし、使用期限は一ヶ月。対象は国内の商店、娯楽、飲食店に限られる。
「要は、財布を一度だけ軽くする代わりに、商人や街の空気を元気にしたいんです。」
制度の導入により、町中では歓声とざわめきが広がった。
「焼き菓子、もう一個買える!」
「久しぶりに映画でも観に行こうか?」
一方で、商店街も活気づく。
「新規客が増えて、宣伝の効果もある。」
「この期間で常連になってくれたら嬉しい。」
当然、批判の声もあった。
「ばらまくだけでは意味がない。」
「一時的に過ぎないのでは?」
それに対してバレルは、こう言った。
「一時でいいんです。笑顔が、賑わいが、“明日も頑張ろう”の連鎖を生む。そういう設計なんです。」
小さな一手。
しかしその一手が、冷え込んだ魔界経済に、確かな熱を灯していた。




