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第52話:就任式は、今日も通常運転で
「えええええ……ほんとにやるんですか、これ。」
と、バレルは言った。
だが返事は待ってくれない。
「総理大臣、就任おめでとうございます!」
各国の使節、魔族の長老、各種族代表、果ては魔王までが集う一大セレモニー。
なのに――
「ネクタイの巻き方、わかんなくて尾で縛りました。」
「え、いつもの服じゃないんですか?」
「だって儀礼服、動きづらいし。尾の可動域がね……。」
壇上に上がるバレルは、完全にいつもの調子。
そして、開口一番。
「みなさん、本日はお集まりいただき……いやもう帰って大丈夫ですよ?」
ざわつく会場。
「政は日常であって、イベントじゃない。派手なセレモニーより、今日の炊き出しが優先ですからね。」
それでも、スピーチだけは求められた。
「ええと、じゃあ簡単に一言。
“変わること”を恐れず、“変えること”に誇りを持ち、“変えられないこと”には銃尾で向かっていきます。
そんな政府でありたいと思います。」
拍手の波。
終始ゆるく、しかし芯のある、バレルらしい就任式だった。
その後、式典の宴では尾でカクテルを混ぜ、賓客とじゃれ合うという、 「魔界で一番くだけた総理」の誕生が、ここに確定した。




