第51話:魔王? それはちょっと……
久しぶりに届いたのは、黒い封蝋の手紙だった。
――差出人:サタン魔王
「お茶、しようぜ。」
そう一言だけ書かれたその招待に、バレルは苦笑いを浮かべつつも足を運んだ。
会場は、魔王の離宮。
豪奢な装飾と、かすかに香る紅茶の匂い。
サタンは椅子にふんぞり返りながら、唐突に言った。
「そろそろ、お前が新しい“魔王”になる覚悟はできたか?」
バレルは、一瞬も迷わず答える。
「ないですね!」
間髪入れずに。
サタンは豪快に笑った。
「やっぱりな!……いや、冗談じゃねぇよ?」
「いやいやいやいや、冗談にしておいてください!」
「じゃあ、せめて“総理大臣”みたいなもんになっとけ。今もう大体そんな立場だし。」
「え? えええ? いつの間に?!」
「連盟も国際評議も、お前が中心で回ってんだよ。あとはハンコ押すだけだ、ハンコ。」
「俺、ハンコの位置も知らないんですけど!?!?」
お茶は、なぜかバレルが淹れることになっていた。
「これ、ぜったい罠でしたよね……。」
「安心しろ、毒は入ってねぇ。あとお前の任命書、すでに連盟で可決済みな。」
「うっかりだ……うっかりトップにされてる……。」
その日、魔王の間に響いたのは笑い声と、ため息と、ちょっとだけ誇らしげな紅茶の香りだった。




