第5話:声を集め、法を動かせ
「……君、噂のバレルくんだね? よければ“ひと言”、もらえるかな。」
魔導紙《マ=リレイ通信》の記者、長い耳をした妖魔族の女性――メイリ。
「発言は切り取られても構いません。ただ、事実は曲げないでください。」
「なるほど、面白い政治家だねぇ。」
彼女は手元の魔導録音筆を走らせ、バレルの町視察を記事にする。
『町長バレル、混血と純血の壁に風穴を開ける』
そのタイトルは、思った以上に影響を与えた。
魔界各地から、混血の住民や社会的に弱い立場の者たちから、バレルの屋敷に陳情が寄せられた。
「差別的な税制を見直してほしい。」
「子どもの教育機会が不公平だ。」
「居住区の分断を撤廃して!」
一つ一つに目を通し、町の広場で公開ヒアリングを行った。
「私は全てに答えられるとは限りません。ただ、答えようとすることは誓えます。」
それは民衆にとって、初めて“自分たちの声が届いた”瞬間だった。
そしてバレルは、その声をまとめ、議会に正式な陳情として提出する。
「これは、単なる嘆願ではありません。魔界の民が、自らを語った記録です。」
保守派も改革派も、最初は鼻で笑っていたが――
内容の緻密さ、証言の真摯さ、そしてバレル自身の演説によって、次第に空気が変わっていく。
「……君、ほんとうに民を動かす気かね。」
シェイランがぽつりと呟いた。
「“風”は、ただ吹くだけでは届かない。帆を立てて進まなければ。」
バレルの目は、次なる法案――“混血への教育平等法”に向けられていた。




