第35話:模倣の種、価値の芽吹き
バレルの町で根付いた再教育制度と職能支援策は、銃尾連盟の内部を超えて魔界全土へと波及し始めていた。
特に、長年中立を保っていたファルメリア国が大きく動いた。
「制度模倣案、“社会転移支援モデル”を本国でも採用する。」
評議会でそう発表したファルメリア代表の言葉は、多くの魔王たちを驚かせた。
その背景には、文化的自由を尊ぶ彼らが“変化を恐れず選択できる社会”に価値を見出したことがあった。
「価値観は、制度によって変わる。だが、制度もまた価値観に育てられる。」
そう語ったのは、ファルメリア教育長官で、バレルと一度だけ意見を交わしたことのある人物だった。
一方、他国でも似た動きが加速する。
ベルトーラ国では、退役軍人を技術教官に再配置する「第二任務制度」が発足。
クルガナス国では、魔力研究者の民間転用プロジェクト「民研連携機構」が発足。
「バレル式」と呼ばれる制度モデルは、今や一種の流行語となり、各地で独自の形に適応されていった。
町の子どもたちが遊びながら口にする。
「将来はね、討論家か、魔導技師か、あと町長もいいな!」
バレルは報告を読みながら、小さく笑った。
「“選べる未来”ってやつですね……地味だけど、いい言葉です。」
価値観は、確かに変わっていた。
制度が、社会の“当たり前”を塗り替えていく。
それが“進化”なのだと、誰もが少しずつ理解しはじめていた。




