第29話:評議の椅子に、銃尾が響く
七魔王評議の円卓に、バレルの席が設けられた。
緊張が漂う中、各国の魔王たちが着席する。
古き強硬派、保守的な純血主義国、経済至上主義国、軍事統制国家……
“バレルの政治”に好意的とは言い難い顔ぶれが揃っていた。
司会役の中立魔王が口を開く。
「本日より、新評議補佐官・バレル・ミルストーン殿が参加します。」
微かなざわめき。
しかし、バレルは表情を変えず、尾を椅子の背に引っ掛けながら言った。
「えー……まあ、招かれたんで来ました。ぶっちゃけ評議入りは乗り気じゃなかったんですけど、やるならやります。」
空気が一瞬、凍る。
だが続けて、彼は手元の資料を掲げた。
「これは俺の町の公共意見箱に届いた“魔界共通政策”案です。提出数、約三千通。重複除外で六百案。」
「え、住民の意見か?」
「そうです。“現場”からの声。魔王会議ってのは、現場の声を聞く場所じゃないんですか?」
重い沈黙。
そのとき、ラザーレ魔王が笑った。
「ほう。面白いではないか。ならば討議に値しよう。」
それを皮切りに、他国の代表がざわつき始める。
「民の声など、政策には不要だ!」
「言葉では戦は終わらぬ!」
バレルは静かに立ち上がった。
「そうですね。言葉じゃ戦は終わらない。けど、“始めること”はできるんですよ。」
尾が銃へと変わり、議場の床を“コン”と叩いた。
「俺は撃ちます。ただし、“最初の一発”はいつだって、言葉です。」
新たな戦場は、ここにあった。




