第22話:言葉の芽が咲くとき
ある日、意見徴集局の報告に、バレルは目を止めた。
「投稿数、前月比約三割増……?これは……。」
内訳を見て、思わず口元が緩む。
「ほとんどが“制度”や“社会のあり方”に関する意見だ……。」
混血の扱い、教育の方向性、行政の透明性。
様々な市民が、自らの言葉で、政治について考え、投稿していた。
しかもその大半には、反対意見への“反論”が添えられていた。
まるで、意見箱を通じて“討論”が行われているかのようだった。
「……すげぇな、これ。」
そのころ街角の茶店では、年配魔族と若い混血たちが言い争っていた。
「魔力の純度は教育には必要だと言っておろう!」
「でも、混血の方が柔軟な発想に富んでるというデータもあるんですよ!」
横で見ていた学生風の青年が、苦笑しながら言った。
「“でもさ”、って言ってる時点で意見が整理できてないな、俺ら。」
「……じゃあ図書館で資料調べて、また来週議論しようぜ。」
バレルは高台から、町を眺めていた。
風に乗って、雑踏の中から言葉のやり取りが聞こえてくる。
「俺、あの薬草税反対!」
「いやでも財源は必要じゃない?」
それは、誰に強制されたわけでもない“声”だった。
「……ようやくか。」
その一言に、誰も気づかない。
尾の銃は、今日は眠ったままだ。
なぜなら、今日はもう――撃つ必要がなかった。




