第21話:包囲網の穴から聞こえる声
バレルの影響力が増すにつれ、政界には静かな“包囲網”が築かれ始めた。
古き魔王家と結びついた保守派、権威を守る学術機関、旧体制を維持する地方領主たち……
「バレルの発言権を削れ」「発言機会を絞れ」「討議の場に招かないように」
そんな声が囁かれる中、ついには議会で“発言制限案”が提出された。
表向きは「会議効率の向上」だが、実態はバレルの抑制だった。
――しかし、それは早々に無意味であると証明される。
「我々教育局は、町長代理として提案を代読いたします。」
「医療局より、現場データに基づく修正案を提出します。」
「経済委員より、予算案の補足説明を行います。」
そう、バレルの政策は既に“仕組み”として動いていた。
発言を止められても、現場で働く者たちがそれを引き継ぐ。
代読された言葉は、彼の思想そのものであり、理路整然と、時に情熱的に議場を包んだ。
結果、発言制限案は却下された。
「……彼の発言を封じても、言葉は残る。ならば、むしろ討議の場で論じるほうが有意義だ。」
そう判断したのは、意外にも中立派の老魔王だった。
「言葉を交わせぬ者に、政治は任せられんよ。」
その言葉に、多くの者が頷いた。
バレルは、自室の机に届いた報告書を読みながら、わずかに微笑んだ。
「討論を封じるなら、それは民主ではない。……俺は、議論する方が性に合ってるんで。」
銃は撃たず、言葉が制度を守った。
それもまた、ひとつの“戦い方”だった。




