第19話:言葉の弾丸、銃尾の静寂
拘束された混血教育官カラミルは、尋問室で黙って書類をめくっていた。
「……君は混血でありながら、この国の教育現場に口を出し、思想を混乱させたとされている。」
取り調べ官の言葉に、彼はゆっくり顔を上げた。
「“考えること”が混乱なら、この国はもともと危ういですね。」
その一言で、室内の空気が変わる。
「私はこの国の子どもたちに、“疑問を持つ”ことを教えました。それを禁じるのが、あなた方の教育なら、私の存在が間違っているのではなく……制度が時代遅れなんですよ。」
彼の毅然とした姿勢と、保護者からの“カラミルを返せ”という声の広がりにより、当局は静かに拘束を解いた。
その頃、バレルは町の外れに立ち、刺客を待ち構えていた。
「どうやら、“俺が留守”ならやれると踏んだらしいな。」
現れたのは、魔道具に身を包んだ強硬派の刺客三名。
しかし――
銃声は一発。
動くことなく、三人は静かに倒れた。
「帰ってこい、カラミル。俺はお前の背中を守る。」
そしてその日の夕方、彼の尾が揺れた。
「ただいま戻りました。」
カラミルの笑顔と共に、嵐のひとつが静かに通り過ぎた。
―――
翌日。
バレルはフィルネスの派遣先へと直接足を運んでいた。
「この研究は、混血だから生まれたのではない。“才能があったからこそ”実現したものだ。」
魔導学府の長老たちに向かって放たれたその言葉に、重苦しい会議室が静まり返る。
フィルネスも、静かに口を開いた。
「私は純血です。ですが、混血の知識と交流が、私の理論を完成させた。それは否定できません。」
その発言とバレルの交渉により、研究は“魔界学会外部支援枠”として認可され、論争は終結した。
帰り道、フィルネスがぽつりと呟いた。
「あなた、たまに厄介だけど……確かに、必要な人ですね。」
「どうも。俺も、そう思います。」
風はまた一歩、確かな流れとなって広がっていった。




