第17話:国を越えて、知を運ぶ者たち
魔王会議での協定締結を受け、各国との人材交流が本格的に始まった。
最初にバレルの町にやってきたのは、冷血魔王クルガナスのもとから派遣された魔導官フィルネス。
純血中の純血と呼ばれる名家の出でありながら、機械魔導技術の研究では他の追随を許さない才女だった。
「……混血の町に来るなど、祖母が聞いたら墓から起き上がるでしょうね。」
と毒を含んだ言い回しながらも、バレルの政策には一定の理解を示していた。
「“可能性”は血筋に宿るものではない、という点では同感です。」
一方、バレルの町から派遣されたのは、混血の若き教育官カラミル。
精霊魔術と数理論理を融合させた独自の教育法を確立した若者で、異国の魔導学校で早くも成果を上げつつあった。
「“混血のくせに”などと言われるのも、もう慣れました。でも、成績を出せば文句は減りますから。」
彼の地道な努力と成果は、次第にその地の人々の心を溶かしていった。
こうして、純血と混血、双方から送り出された才能たちは、それぞれの土地で“常識”を揺るがす一石となっていた。
―――
バレルはその報告書を手に、ふと目を細めた。
「この流れが、本当に未来を変える一歩になるなら……銃よりも強い力になるかもしれない。」
シェイランが笑って言った。
「若いの、“知”は時に刃より強い。“民”は時に軍より重い。お主がその両方を使えるなら、もう何も怖くあるまいよ。」
風は、国境を越えて吹き始めていた。




