第11話:民意の仕組みを、この手で
「バレル様、新たな法案……“意見徴集局”の設立案ですか?」
執務室での執事の問いに、バレルは頷いた。
「ええ。“声を集める機構”がなければ、政治は“聞いているふり”しかできませんから。」
魔界には、民衆の意見を公的に集める仕組みが存在しなかった。
貴族と魔王、議会――それがすべてを決める世界。
バレルは、そこに穴を開ける。
「“目安箱”――人間界の古い制度を魔界流にアレンジし、魔導通信網を通じて各町に“意見魔柱”を設置するんです。」
「意見魔柱……声を記録して、集約する魔道具ですね?」
「ええ。定期的に解析官が内容を要約・分類し、それを“民意報告”として議会に上げる。形式上は情報提供、しかし実質は“影響力”を持つ資料です。」
魔界の政治家たちは当初、鼻で笑った。
「そんなもの誰が真面目に投稿する?」
「民の愚痴を聞いて何になる?」
だが、バレルは構わず実行した。
そして最初の一月で、なんと5万件を超える意見が寄せられた。
教育、医療、交通、税制、魔獣駆除に至るまで、実に生々しく具体的な声。
「これが、“政治の現場”だ。」
バレルは全てを読み、選別し、議会で提示した。
「我々は“想像”で法を作ってきました。しかし今後は、“実地に基づいた提言”によって法を整備すべきです。」
魔王はそれを見て、小さく呟いた。
「……まるで“別の世界”から来たようだな、あの男。」
その言葉に、シェイランが笑って答える。
「そりゃあ、バレルは“時代”をまたいだ男ですからな。」
こうして、魔界で初めて“民主的参加”の制度が芽を出した。
それは、民の声が風となり、制度を動かすという“革命”の始まりだった。




