第100話:これにて平定
「さあ、どんちゃん騒ぎのお時間です。」
久方ぶりの選挙戦が始まった。
今回ばかりはバレルも候補者として名前を載せてはいたものの、 本人が演説することも街頭に立つこともなかった。
「今回はね、ただの見物人です。」
バレルはサタン様の隣で、露店の串焼きを齧っていた。
立候補者は多彩そのもの。
バレル派の若手議員、反発派閥の巻き返し、 魔王本人が出馬したと思えば、子供議員が「自由帳に書いたから!」と登壇。
政策も主張も何もかもが飛び交う、かつてない選挙戦。
「我が名は“未来の魔界そのもの”! 民よ、我に従え!」
「選挙ポスターに落書きしないでください!」
「バレル様の紅茶銘柄に反対します!」
混沌と混迷。
——それでも、人々は笑っていた。
「まるでお祭りじゃな。」
「これが“政治”ですから。」
サタン様と共に、バレルは腹を抱えて笑っていた。
結果発表の日——
投票数は、記録的な伸びを見せ、 それでも最後に名前が残ったのは——
「バレル、またか……。」
本人すら首を傾げる結果だった。
「今回はやめたかったんだけどなあ。」
銃尾は、何も言わず紅茶のカップに寄り添っていた。
だが、彼は笑っていた。
何よりも、嬉しそうに。
こうして、魔界は平定された。
——完——




