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ラビットホール  作者: 愛屋及烏
新米バニーになるまで
4/36

4話「新米バニー?」

「失礼します……。」


薫が指定された部屋に入ると、そこは至って普通の面接室だった。

血みどろの不気味な雰囲気を想像していた分、拍子抜けしてしまう。


面接官らしき青年は、想像以上に美しかった。

光を集めるようなブロンドの髪、深紅の瞳――どこか非現実的で、

むしろ“人”なのか疑いたくなるほどだ。


(……さっきのやばい人じゃなかった。よかった……)


そう安堵したのも束の間、青年の視線が真っ直ぐ薫を射抜く。

「……大丈夫か? 顔色が悪いようだが…?」


「え、あ……だ、大丈夫です!」


声が裏返り、薫は慌てて否定する。

だが、心臓はさっきの余韻のせいか少し痛い。


──本当は大丈夫じゃない。でも、知らなかったことにしよう。

あれが何であれ、ここで余計なことを口走るのはマズい。


(……ていうか、こんな美形が面接官って何?

“容姿は問わず”って書いてあったけど…。

この調子ならきっと僕は落ちるはず…そうなって欲しい!)


「では、面接を始める」


青年は淡々と告げる。

薫も姿勢を正し、意を決して口を開こうとした――が。


「合格だ」


「……は?」


言葉が喉に詰まったまま、薫は一瞬息を呑む。

“合格”という言葉が、まるで理解できない謎のように胸に響いた。


「ん?…あぁ、名前を言い忘れてたな。俺はしゅうだ。」


「いやいやいや…言うべきことはそこじゃないでしょ!」


青年…いや、しゅうという面接官は、

ポカーンとした表情でこちらを見つめてくる。


薫の表情も、どうしていいかわからずに固まっていた。

胸の奥はまだざわつき、呼吸は少し浅くなる。


(そうだ、あれは"合格だ"ではなくて、互角だって言ったんだ。

僕の前に面接していた人と互角で張り合ってるってことだ!

うん、そうだ。そうに違いない。)


でも、頭ではそう思いつつも、全身は微妙に緊張を解けずに固まっている。

普通、まだ何も話していないのにいきなり合格って言うのはおかしい──と、

常識的に考えれば自然にそう結論付けるはずだ。


きっとあれは僕の聞き間違いなんだ──そう、自分に言い聞かせていた。


「あ、僕も名前言ってませんでしたね…僕は瀬戸薫です!」


「あぁ…。では、そこから源氏名というか活動名を──」


声が震えそうになるのを必死に抑えながらも、薫はゆっくりと答える。

その一言ごとに、胸のざわめきがまた一段と強くなるのを感じた。


「や、やだな〜…しゅうさん。僕まだ"互角"なんですよね?」


しゅうの目が、真っ直ぐ薫を見つめる。

まるで問いかけるように静かに、しかし確実に。


「……?"合格"だが」


その言葉を聞いた瞬間、薫の頭の中が一瞬白くなる。

──やっぱり…聞き間違えじゃなかったのかもしれない。

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