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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

木々が生い茂るファンタジー世界にて

作者: まい

 タイトル通り。


 木々で世界のほとんどが埋まっている、そんなファンタジー世界の光景。

「除草剤、除草剤を売ってるよー!」


「ん? 聞かない物だな。 どんな物なんだ?」


 とある魔法が存在するファンタジーな異世界。


 この世界は緑がとても豊富で、どこの大きな街の周辺でも深い森が必ずあり、その豊富な木材によって建てられる木造建築達が牧歌的な雰囲気を醸しだす。


 世界規模で水源にも恵まれ、どこにいようと温暖な気候で農作物も安定して生産できる、非常に恵まれた世界だ。


 お陰でこの世界の人類は順調に独自の文化・文明を築き上げ、人口を増やしている。





「良くぞ()いてくれました! コイツは特別製の薬でね、そこらの雑草に撒くだけで数日後には枯れ始める凄いやつ。 大量に撒けば木にだって効いちゃうんだぜ? でも撒いた日に雨が降ると、薬が流れて効果が無くなっちゃうから注意してね」


「へえ、そいつぁ本当に凄い。 あの魔物化した木にまで効いたりするのかい?」


 世界は人類にとって非常に都合が良く、天国みたいな世界。


 ……と思いたいが、その世界には不穏があった。


 木は時折、牙を剥く。


 どんな原理か生えている木がいきなり動きだし、動きだした場所の周辺を破壊した後、人類を襲うようになる。


 魔物化した木はとても倒しにくい。 木そのものが頑丈で、暴れだすようなのは太い木である事も多い。


 そんな木を瞬時に切り倒したり()()れる道具などこの世界には存在しておらず、1体魔物が出てくるだけで、毎回てんやわんやの大騒ぎとなる。


 伐採済みの木には変化が起こらず、変わらず木材として有効活用できるので、資源としての価値は変わらないが。



「……あー、残念だが魔物化している木には効かないな。 植物にとって毒になるものを地面に溶け込ませて、それを植物に根で吸い上げさせて枯らすからな。 あいつらは根が足になって動くから、いくら除草剤をまいても吸ってくれないんだよ」


「そうか。 でも、それでも街の近くに生えてる木が魔物になる前に、(きこり)()りきれない木を枯らせるのは大きいだろ」


 何故かは知らないが、人類の街周辺に生えている木が魔物化しやすい。


 しやすいからと危険性を考えて木を街から遠ざけすぎても、今度は木材にした木を街へ運び込むのに大変な労力が要るので、程よい折り合いの取れる距離を探している。




「そうなんだがな? でも注意事項だ。 除草剤で枯らした木は中身がボロボロになるみたいで、まともな木材にならないならな」


「それなら問題無いな。 樵が樵りきれずに魔物化した木に襲われて命を落とすよりは、ずっと良い。 魔法で木をどうにかしようとするなら、火をつけて焼き払うしかない。 でもそれで街に飛び火されたら目も当てられないからな」


 だが資源となる木は、人類にとって多すぎれば害となる。


 適度にかつ安全に木を処理できるならと、この突如として現れた除草剤なるアイテムは、登場直後に脚光を浴びる事となる。



「ところでにいさん。 今まで、ここらであんたを見た事がないな。 いったい誰なんだい? そんで、どこからこの除草剤を持ってきたんだい?」


「除草剤は遠い遠い、誰も知らないような遠くから買い付けてきたモンだ。 んでオレも遠い遠いどっかの国から来た流れ者さ。 出自なんて細かい話、どーでも良いじゃねーか」


「いや、そういう訳にもいかないんだ。 使えそうなモノを仕入れて売る流れ者の商人なんて、お偉いさんが抱き込みたいに決まってるだろ? その時にどっかの貴族領や国からのスパイだったら笑えないから、調べなきゃならん」


「…………この地の貴族様の騎士様か兵士さんで?」


「そんな所だ。 ちょっと、そこの城まで付いてきてくれるか?」


「………………へい」



 これは、世界的なヒット商品となる除草剤が、世界に()()()知られた一幕である。





 世界的に除草剤の概念が広まって行き、木の数を明確に減らせるようになった人類は、土地の開墾(かいこん)を加速させた。


 結果として人類の人口は増え、最終的に。




 除草剤の概念が登場してから、たった3桁年で世界は滅亡した。





 なぜならこの世界の根幹は木……もっと大きく言うと、植物である。


 この植物……主に木は科学的なモノやファンタジー的なモノも取り込み、木の体内で浄化し、放出する。


 そのファンタジー的なモノの中に負の感情を始めとした悪いモノがあり、ソレの許容量を超えると木が魔物化するのだ。


 つまり人類が木の許容量を超える数の人口が存在する限り、木は魔物になる。


 木が減れば減るほど、木全体で受け止められる悪いモノの許容量が総体的に減る。


 木が減ったら減った所に人類が住み着き人口が増える。


 人口が増えれば負の感情等が増え、木にかかる負担が増える。


 負担が増えれば、魔物化する木が増える。


 魔物化する木が増えれば、人が木を危険視して先んじて木を樵る数が増える。


 そうしていればいつしか、木が増える数より減る数が上回る。


 やがて浄化しきれなくなった悪いモノが世界を覆い、木ではないモノ達も悪いモノの影響を受けるようになり、世界は終わる。




 この世界に人類が発生し、文明を築いてしまった時点で世界の滅亡は予定されていたが、その滅亡はまだまだ先だった。


 が、滅亡までのカウントダウンを早めたのが、除草剤。


 この商人はほぼ間違いなく異世界で通信販売が出来る異世界転生なり転移なりをした者であろう。


 さらにこの商人は、遠方の土地へ除草剤を輸出するにはコストがかかり過ぎて値段と効果が釣り合わなかろうと、手作り除草剤を作るレシピまで売るようになった。


 これが世界の滅亡をより早める引き金となる事を、当の商人は知らなかった。


 ただただ、人の苦労が減れば良いと願って売り出した物である。


 つまり善意でもって、世界が壊れる結果となった。


 せめてもの救いは、推定転生・転移者自身が自身の行いの結果を直視せずに逝けた事だろうか。

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(後書きの文章中にも誤字が居るので、ついで報告です。 〉木が減ったら減った所に人類蛾住み着き人口が増える。 ~人類『が』住み着き~ かと。) ふむ。「この世界」的には良かったのだろう。 植物の持…
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