転生管理人:トリカ
これより第2章開始です!
よろしくお願いします!
〜前話までのあらすじ〜
人々の転生を司る「転生管理人」で日本を担当しているのフィオラムは気分で人の転生先を決めるとんでもない女神だった!
そんな彼女の元に、事故死した江坂智弘がやってくる。
だが、彼の態度が気に食わなかったフィオラムは智弘をゴブリンに転生させた。
ゴブリンに転生した智弘は人間の街に潜入するが、魔法道具屋の店長、クルルにその正体がバレた事を理由に彼女を殺してしまう。
だが、クルルももとは転生者であり、フィオラムの‘お気に入り’だった。
そのため、智弘はフィオラムの逆鱗に触れ、雷に打たれてしまった……!
智弘に天誅を下してから5日程経った。フィオラムは相変わらず、自分の部屋を気になった場所にしてみては飽きるという繰り返しをしている。
今日のフィオラムはラベンダーの花畑の中で寝転がっていた。ラベンダーの花言葉は「幸せがくる」らしいがラベンダーに寄ってきているのは幸せではなくアブラムシばかりだ。
フィオラムはため息を吐き起き上がった。体に付いたアブラムシが不快だ。
フィオラムが指を鳴らそうとした際、いきなり目の前に赤髪のショートヘアをした若い女が現れた。
その女はフィオラムが反応をする前に口を開いた。
「Прошло уже много времени. Как ты?」
フィオラムはちっ、と舌打ちをする。
「ロシア語で喋んな。気持ち悪りぃ。何でロシアの管理人がここに来るんだよ」
するとそのロシアの転生管理人である女——トリカがくすりと笑う。
「こりゃ失敬。また世界滅ぼしてるのかと思ったからさ。まあ私はこの100年間一回も滅ぼしたことないけ……」
その言葉が言い終わらない内に
「雷、天誅」と唱えトリカに雷を落とす。
トリカはその雷を難なく避け、
「危ないね。もし私が死んだら神判にかけられるよ。最悪死刑。大丈夫なの?」
フィオラムは不機嫌なのを露わにし、「うるせぇな。ごちゃごちゃ喋んな」と吐き捨てる。
それを意に止めずにトリカは話す。
「そんなんだから“戦の神”の力と称号を剥奪されて、下級神である“転生管理人”なんかに回されるんだよ。“戦の神”は上級神なのに勿体無いね」
フィオラムの頭の中で何かが切れた。
「殺すぞ、お前」
それを聞いた途端トリカの小馬鹿にしたような顔と口調が消え失せ、苛ついた物になった。
「それを言いたいのは私の方だよ。君が急に現れたせいで私は“戦の神”から降ろされ100年以上ロシアの“転生管理人”になっているんだからね」
フィオラムはトリカの事を鼻で笑う。
「お前が“戦の神”から降ろされたのは実力不足だろ。凡才」
「君は自分が天才だとでも思っているの?戦いしか能のない戦闘狂が」
「戦いすら能のない雑魚は黙ってろよ。そんなんだから私に負けたんだよ」とフィオラムは小馬鹿にしたように笑った。
トリカは何も言い返せないようだ。
トリカはフィオラムを睨みつけ、「この落とし前はしっかりとつけて貰うから。君にも、私のことを君よりも無能だと評価した上級神たちにも」と言い放つ。
「覚えといてやるよ、その言葉」とフィオラムが言った。
その言葉を言い終える前にトリカはフィオラムの前から姿を消したのだった。
「何だったんだ……あいつ」とフィオラムは呟きながら指を鳴らし、自分の部屋に戻す。
そして椅子に座り込む。トリカとの論争のお陰で疲労感がどっと押し寄せてきたためだ。
すると鐘の音が聞こえた。そしてフィオラムの前に中学生ほどの少女が現れる。
「どこ……ここ……」と少女は困惑している。
そんな少女を尻目にフィオラムはノートの新しいページを見る。
“神崎 好友 13歳
死因:自殺(両親を包丁で刺し殺した後、自分の喉を切り裂いた)”
「へぇ」とフィオラムが声を漏らす。
この少女が一家心中を起こしたのだ。この引っ込み思案に見える少女が。
面白そう、という感情がフィオラムの中に巻き起こる。
「何で殺したの?」と唐突にフィオラムは聞く。
好友は体をビクッと震わせ
「何で……分かるんですか?」と怪訝そうに聞く。
「言い遅れたね。私はフィオラム。人々の転生を管理する役職、“転生管理人”だ。生前何をしていたかはこのノートで分かる」とひらひらと転生管理記を振り翳した。
「そんなことが実際にあるんですね……。あっ、質問してましたね。すみません。理由は名前のせいなんです」
「名前?確かに珍しい名前だけど」
「私はこの“好友”ってキラキラネームのせいでずっと虐められてきました。私が望んだ名前じゃないのに。
親からはこの名前は友達を大事にして欲しいっていう意味があると言われました。でもそれなら“友美”とか“友奈”とかでもいいじゃないですか。あとは単純にお菓子好きだかららしいです。ふざけるなって言いたいですよ。子供の名前をそんなことで決めるなって。
そのことについて親に抗議したら烈火の如く怒り出して……。その時に日頃のイジメによるストレスと親への恨みが爆発して気づいたら……」と好友は涙を流ししゃくり上げ始めた。
その過酷な状況にフィオラムは同情した。
好友は本当はいい子なのだ。
親がダメだっただけだ。
フィオラムは好友を無意識にクルルに重ねていることに気づいた。
フィオラムは好友に近づき、そっと頭を撫でる。
「辛かったね。ちょっと待ってて。来世ではいい人生にしてあげるから」
と言いフィオラムは転生管理記を手に取り好友の転生先をペンで書き始める。
“転生先:人間(町の英雄)
名前:エミル・グスタフ 年齢:18歳
Lv:71
スキル:斬撃
Lvスキル:無限再生、読心
経歴:これまで街を襲っていた巨大なモンスターを単独で討伐し、町の英雄となった
転生場所:小さな町の中”
まさにチートスペックだ。だが、これも好友に幸せな生活が訪れることを願ってのことだ。町の英雄にした訳は、好友が虐められていたことに対する人へのトラウマを乗り越えるためだ。
読心を付けたのも同じような理由からだ。
「じゃあ頑張ってね!」とフィオラムは笑って好友に手を振る。
好友は顔を上げた。涙がこびりついた顔を綻ばせ「はい!」と答える。
淡い光に包まれフィオラムの前から好友が姿を消した。
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次話は明日公開します!